Dash (暗号通貨)

Dash（ダッシュ）とは

Dashは、ビットコインのソースコードを基に開発された、オープンソースの暗号通貨であり、決済に重点を置いた設計が特徴です。2015年に「Darkcoin」から名称変更されました。名称の「Dash」は、「Digital Cash」を組み合わせた造語です。

主な特徴

分散型自律組織（DAO）: 世界初の分散型ガバナンスと予算編成システムを備えています。
独自のハッシュアルゴリズム: ビットコインのSHA-256ではなく、X11ハッシュアルゴリズムを使用しています。
高速なブロック生成: 約2.6分ごとにブロックが生成されます。
独自のブロック報酬システム: ブロック報酬は210240ブロック毎に約7.14%ずつ削減されます。供給が完全に停止するのは2477年と予想されています。
通貨単位: 基本通貨単位はDASHで、最小単位はduffです（1DASH＝100,000,000duffs）。
送金手数料: 1バイトあたり1duffsが推奨されています。

歴史

名称の変遷

Dashは、当初「XCoin」として2014年1月にリリースされましたが、同名の会社が存在したため「Darkcoin」に改名されました。その後、2015年に「Dash」へ再度改称されました。創設者のエヴァン・ダフィールドは、この改称について、Darkcoinの目的がダークウェブのサポートではなく、ビットコインの課題を解決し、信頼が不要でプライバシーを守れる高速決済プラットフォームを創ることだと述べています。

ホワイトペーパーの変遷

初期のホワイトペーパーでは、「ビットコインをベースにした初のプライバシー重視の暗号通貨」と記述されていましたが、改良を重ねた結果、現在のホワイトペーパーでは「決済に主眼を置いた暗号通貨」を標榜しています。

コードベースの変遷

リリース当初はLitecoin v0.8.6.2のコードをベースにしていましたが、その後Bitcoin Coreのコードをベースにするようになりました。

インスタマイン問題

リリース直後の24時間で大量のコインが採掘される「インスタマイン」が発生しました。これは、難易度調整のバグが原因でした。開発チームはバグを修正し、ハードフォークを実施しましたが、コミュニティの反対により、最初の供給はそのままに開発が続けられました。

テクノロジー

Dashはビットコインの技術をベースにしていますが、独自の技術も多く搭載しています。

マスターノード

Dashには、フルノード運営者に報酬が与えられる「マスターノード」という仕組みがあります。マスターノードは、ブロックの検証だけでなく、チェーンロックス、プライベートセンド、インスタントセンド、ガバナンス機能も担います。マスターノードを稼働するには1,000DASHの所有が必要です。マスターノードとマイナーはブロック報酬の45％をそれぞれ獲得し、残りの10％はDash DAOの予算となります。

LLMQ（長寿命マスターノードクォーラム）

LLMQは、マスターノードで構成される長寿命の選抜集団です。LLMQにより、トランザクションの高速処理とセキュリティ強化が図られます。

チェーンロックス

チェーンロックスは、LLMQがブロックを承認することでブロックの再編成を不可能にする仕組みです。これにより、51%攻撃への耐性が向上しています。

プライベートセンド

プライベートセンドは、CoinJoin形式のトランザクションを作成し、送金履歴を難読化するプライバシー保護機能です。複数のマスターノードを介してコインミキシングを行うことで、分散型の信頼できるサービスを提供します。

インスタントセンド

インスタントセンドは、トランザクションを数秒でロックし、決済を完了させる機能です。LLMQベースのインスタントセンドにより、すべてのトランザクションが即時に完了するようになりました。

スポーク

スポークは、Dash独自のアップグレード手法です。ハードフォークにもソフトフォークにもあたらないため、この名前が付けられました。スポークは、新機能やバージョンを段階的に導入し、エラー発生時にもネットワークの安定性を保つ役割を果たします。

X11ハッシュアルゴリズム

X11ハッシュアルゴリズムは、11種類のハッシュ関数を組み合わせた独自のアルゴリズムです。これにより、ASICマイニングの寡占化を遅らせ、セキュリティを向上させることを目指しています。

ダークグラビティウェーブ

ダークグラビティウェーブは、ブロック生成時間を一定に保つための難易度調整アルゴリズムです。1ブロックごとに難易度を調整します。

ガバナンスと資金調達

ブロック報酬の10%はDash DAOの予算となり、コミュニティが提案した予算案の承認と資金調達を行います。マスターノード保有者は、予算案や重要な決定に対する議決権を持ちます。

Dash DAO内の組織

Dash DAOの予算で運営される主な組織は以下の通りです。

Dashコアグループ: Dashのソースコードの開発、マーケティング、カスタマーサポートなどを担当する企業です。
Dashトラスト: Dashコアグループの全株式を所有する信託組織で、役員の人事権や資産の保有を行います。

マイニング

Dashネットワーク上のトランザクションは、POW（プルーフオブワーク）方式を使用したマイニングによって保護されています。マイナーは、X11ハッシュアルゴリズムで与えられる問題を解き、ブロック報酬を得ます。

混同されやすい別の暗号通貨・プロジェクト

Dashcoin: Dashとは全く異なる暗号通貨で、現在は開発されていません。
Darkwallet: ビットコインのウォレットであり、Dashとは無関係のプロジェクトです。


Dashは、決済に特化した機能、プライバシー保護、DAOによる分散型ガバナンスを兼ね備えた、先進的な暗号通貨です。技術の進歩とともに、その機能と可能性は広がっています。

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