EFT-1

EFT-1（Exploration Flight Test 1）

はじめに

EFT-1（Exploration Flight Test 1）は、アメリカ航空宇宙局（NASA）が進める次世代有人宇宙船「オリオン」にとって記念すべき初の宇宙飛行試験です。かつてはOFT-1（Orion Flight Test 1）とも称されました。このミッションは、オリオンの基本性能、特に苛酷な宇宙空間や地球への帰還時に直面する様々な環境下でのシステムの挙動を確認するために計画されました。無人で行われたこの飛行試験は、将来、宇宙飛行士を乗せて月やさらに遠い深宇宙へと向かうオリオンの安全性を確立するための重要な第一歩となりました。

ミッションの実施

EFT-1ミッションは、2014年12月5日、フロリダ州のケープカナベラル宇宙軍基地にある第37発射施設から実施されました。打ち上げに使用されたのは、当時アメリカの最も強力なロケットの一つであったデルタIVヘビーです。壮大な打ち上げを経て、オリオン宇宙船は所定の軌道に乗せられました。

飛行プロファイル

この試験飛行は約4時間30分にわたるものでした。オリオン宇宙船は地球を2周しました。ミッションの主要な焦点は、2周目の軌道の遠地点に到達した後、およそ時速20,000マイル（約32,000km/h）という極めて高速での地球大気圏への再突入でした。この速度は、将来オリオンが月などから帰還する際に想定される速度に近いものです。高速での大気圏再突入は、宇宙船の機体構造や熱防護システムにとって最も過酷な試練の一つであり、EFT-1では特にこのフェーズにおける宇宙船の耐熱シールドの性能や空力特性、誘導制御システムなどが詳細に検証されました。再突入が始まるまで、オリオンカプセルは打ち上げに使用されたデルタIVロケットの上段ステージに結合した状態を維持しました。これは、将来のミッション構成とは異なりますが、特定の軌道プロファイルを達成するための措置でした。

オリオン宇宙船の構成

EFT-1で使用されたオリオン宇宙船は、あくまで試験用の構成でした。たとえば、電力供給は太陽電池パネルではなく、機体内部に搭載されたバッテリーに完全に依存していました。また、欧州宇宙機関（ESA）が開発を担当する実際のサービス・モジュールや、万が一の事態に備える打ち上げ脱出システム（LAS）は搭載されず、質量や空力特性を模倣したダミーが使用されました。ただし、LASの分離用モーター部分は実際に機能するものが装備され、試験されました。

オリオンカプセル本体は、航空宇宙大手ロッキード・マーティン社によって製造されました。機体の主要構造は2012年6月22日に最後の溶接が完了し、その後ケネディ宇宙センターへ輸送されて、残りの組み立てや機器の取り付け作業が行われました。

ミッションの終了と成果の評価

再突入試験を終えたオリオンカプセルは、太平洋上に正確に着水しました。着水後、カプセルは速やかに回収されました。この回収されたEFT-1オリオンカプセルは、その後、地上での打ち上げ脱出システムを使った上昇中断試験に再利用される計画でした。これは、開発コストの抑制と、実際の飛行で得られたデータとの比較を可能にするための効率的なアプローチです。

EFT-1飛行試験を通じて収集された膨大なデータは、オリオン宇宙船のアビオニクス（航空電子機器）、堅牢な耐熱シールド、そして複雑なパラシュートシステムなど、多岐にわたるシステムの性能と信頼性を評価するために不可欠なものです。これらのデータの詳細な分析は、その後のオリオン開発における重要な節目である、2015年4月に予定されていたクリティカル・デザイン・レビュー（CDR）で集中的に行われ、最終的な設計承認の根拠となりました。EFT-1は、将来の有人月探査ミッションであるEM-1（Exploration Mission 1、当初は2018年予定）をはじめとする、NASAの深宇宙探査計画を着実に前進させるための、極めて価値の高い一歩となったのです。

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