EXIT TUNESボカロコンピシリーズ

EXIT TUNESボカロコンピシリーズは、株式会社エグジットチューンズが2009年に開始した、初音ミクをはじめとする音声合成ソフトウェアVOCALOIDを用いた人気楽曲を集めたコンピレーションアルバムのシリーズです。これらの作品は、エグジットチューンズの親会社である株式会社ポニーキャニオンを通じて販売されています。

本シリーズの幕開けは、2009年3月4日発売の『EXIT TUNES PRESENTS Vocarhythm feat.初音ミク』でした。インターネット上の動画共有サイトで注目されていた初音ミク楽曲を収録したこのアルバムは、メジャー流通としては初めてのVOCALOIDコンピレーションという画期的な試みで、その後も継続的に新作がリリースされ、シリーズ独自のブランドを確立しました。アルバムタイトルは「EXIT TUNES PRESENTS Voca○○○ feat.×××」または「EXIT TUNES PRESENTS Vocalo○○ feat.×××」形式が踏襲され、「feat.初音ミク」と冠されますが、これは第1作に限ったものではなく、第2作以降は初音ミクだけでなく、他の多様なVOCALOIDを用いた楽曲も幅広く収録されています。動画サイトで既に無料で聴くことができる楽曲をCD化するにあたり、特に収録音源の音質向上に力を入れている点が、本シリーズの重要な特徴の一つです。

シリーズ誕生の契機となったのは、当時の社名であるクエイクが2008年にリリースした、初音みう名義のアルバム『乙女ダンス type : 01』でした。このアルバム発売に際し、初音ミクの権利元であるクリプトン・フューチャー・メディア株式会社から正式な許諾を得る必要があり、この交渉の過程でVOCALOID楽曲のコンピレーションアルバム企画が提案され、クリプトン側から快諾を得たことが、本シリーズの立ち上げへと繋がりました。黎明期にあたる当時、クエイクは主力であった洋楽の販売不振から新たな事業の柱を模索しており、メジャー流通でのVOCALOIDコンピレーションは前例が全くない状況でした。VOCALOID楽曲の商業CD化自体が正式な許諾を得られるかどうかも不透明であり、動画サイトで活動するクリエイターとの連携もすべてが手探りでした。無料で聴ける楽曲を商業化することへの懸念もありましたが、クエイクはそれ以前から洋楽コンピレーション制作で培った実績と、クリプトンの協力が得られたことから、質の高い作品を生み出すことへの自信を持っていました。VOCALOID、特に初音ミクの人気が高まるにつれて、クエイク以外にも多くのレーベルがCD化企画を試みましたが、中には安易な許諾のみで終わる一過性の企画に留まるものもありました。しかし、本シリーズは成功を収め、その地位を確固たるものとしてシリーズを重ねていくことになります。

シリーズにとって大きな転換点となったのは、2010年に発売された『EXIT TUNES PRESENTS Vocalogenesis feat.初音ミク』がオリコン週間ランキングでシリーズ初の首位を獲得したことでした。当時のチャート状況による面もありましたが、これはVOCALOIDファンを熱狂させると同時に、音楽業界関係者にも大きな衝撃を与えました。音声合成ソフトウェアによるボーカル楽曲がオリコンチャートで1位を獲得したのは史上初めての快挙であり、中には、楽曲のボーカルが仮想の存在であることを知らずに、プロモーターがライブツアーの情報をレコード会社に問い合わせるという出来事もあったほどです。この成功は、当時のクエイクに大きな自信をもたらし、これを機に体制を刷新しました。商号をレーベル名と同じエグジットチューンズ株式会社に変更し、その後の経営の方向性を決定づける重要な転換点となりました。その後も、2011年発売の『EXIT TUNES PRESENTS Vocalonexus feat.初音ミク』でも再びオリコン首位を獲得するなど、シリーズは順調な展開を見せます。

2009年から毎年新作が発売されていましたが、2019年発売の『EXIT TUNES PRESENTS Vocalostream feat.初音ミク』を最後に、シリーズが終了したかのように見えました。しかし、2021年12月15日に、2年ぶりとなる新作『EXIT TUNES PRESENTS Vocalodelight feat.初音ミク』がリリースされ、シリーズ継続が示されました。なお、この作品からは、発売元がこれまでのエグジットチューンズ株式会社から株式会社ポニーキャニオンに変更されています。

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