EXPERIENCE (青木智仁のアルバム)

青木智仁 『EXPERIENCE』

日本を代表するベーシストとして、数多くのアーティストのレコーディングやライブを支え、特に角松敏生バンドの重要メンバーとしてその名を馳せた青木智仁が、自身のセカンド・ソロ・アルバムとして『EXPERIENCE』（エクスペリエンス）をリリースしたのは2000年7月26日のことでした。彼のキャリアにおけるソロ名義の作品としては、前作『DOUBLE FACE』から実に11年もの長い期間を経て発表された本作は、残念ながら青木智仁が2006年に急逝したため、結果として彼の最後のソロ作品となってしまいました。このアルバムは、彼がソロアーティストとして追求した音楽世界を知る上で、非常に重要な意味を持っています。

『EXPERIENCE』に収められているのは、青木智仁ならではのメロディアスかつテクニカルなベースプレイを堪能できるインストゥルメンタル曲が中心です。フュージョンを基盤としながらも、ファンク、AOR、そして一部にブルースのエッセンスも感じさせる多様なサウンドを展開しており、11年という歳月を経て磨かれた彼の音楽性が存分に発揮されています。タイトなリズムワークから歌心あふれるフレージングまで、ベーシストとしての彼の魅力が凝縮されています。

本作の制作には、青木智仁と縁の深い多くのミュージシャンが参加しています。中でも特筆すべきは、5曲目に収録されている「SIESTA」です。この楽曲は、長年にわたり音楽活動を共にしてきた盟友であり、プロデューサーとしても活躍する角松敏生が、作曲、編曲、そしてプロデュースを手掛けています。角松氏特有の洗練された都会的なサウンドプロダクションの中に、青木智仁のベースラインが見事に溶け込み、アルバムの中でも特に印象的な楽曲の一つとなっています。

アルバムの大半はインストゥルメンタル構成ですが、唯一のヴォーカル曲として9曲目の「COME ON, COME OVER」が収録されています。この楽曲は、日本のブルースシーンを牽引してきた実力派シンガー、近藤房之助と永井"ホトケ"隆（ウエスト・ロード・ブルース・バンドなどで知られる）という二人のベテランヴォーカリストをゲストに迎えています。力強くソウルフルな二人の歌声と、彼らを支える青木智仁のグルーヴィーなベースが一体となったこの曲は、アルバム全体の中でも異彩を放つ、聴きごたえのあるブルース・フィーリング溢れるナンバーです。

アルバムの裏ジャケットには、本作のレコーディングに参加した様々なミュージシャンの名前が列挙されています。具体的な演奏パートや各曲ごとの参加者詳細は公表されていませんが、多くのサポートメンバーによってこの作品が作り上げられたことが伺えます。

『EXPERIENCE』に収録されている全10曲は以下の通りです。

FINGER TOUGH  – (5:20)
BOTTOM LINE  – (5:20)
BUMPY STREET  – (5:17)
BLOODY MARY  – (6:45)
SIESTA  – (5:07)
Dr. STOP  – (4:51)
Wandering in the Night  – (5:42)
DONNA LEE  – (2:37)　※カバー曲
COME ON, COME OVER  – (4:56)　※カバー曲
DEVOTION  – (6:53)

リストにある通り、「DONNA LEE」と前述の「COME ON, COME OVER」は、オリジナル曲ではなくカバー曲として本作に収録されています。

レコーディング・メンバーの詳細リストや、本作に関連する特筆すべき脚注については、提供された情報には含まれていませんでした。裏ジャケットにメンバーリストが記載されているという事実に留まります。

青木智仁の『EXPERIENCE』は、彼の洗練されたベース技術と、多様な音楽スタイルへの探求心、そして多くの仲間たちとの音楽的な繋がりが結実したアルバムです。11年の沈黙を破り、そして彼が生涯最後に遺したソロワークとして、その価値は計り知れません。日本のフュージョン、AOR、そして何よりも青木智仁の音楽を愛する人々にとって、このアルバムはまさに必聴の一枚と言えるでしょう。

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