EnOcean

EnOcean社の技術革新と市場展開

EnOcean GmbHは、シーメンスの中央研究所発祥の技術を基に、2001年に設立されたドイツの企業です。創業メンバーはシーメンス出身の4名で、本社はミュンヘン郊外に置かれています。約40名の従業員を擁するファブレス企業として、バッテリーレス無線技術で知られています。

創業と企業理念

CTOであるFrank Schmidt氏のエネルギーハーベストに関する長年の研究が、EnOcean社の設立へと繋がりました。CEOのMarkus Brehler氏は、Schmidt氏の提案を受けて設立の中心メンバーとなり、2001年からCEOを務めています。シーメンスはEnOcean社の設立を社内公募制度を通じて支援し、当初は株式の19％を出資。製品製造は当初シーメンスのライプツィヒ工場が担っていましたが、2009年以降は複数の委託先に分散することでコスト削減を図っています。

バッテリーレス無線技術

EnOcean社の技術の中核は、バッテリーを必要としない無線発信技術です。この革新的な技術は、欧米で300社以上の企業に採用され、650種類以上の製品を生み出しました。シーメンスを始め、Distech Controls、Zumtobel、Omnio、Osram、Wieland Electric、Peha、Thermokon、Wago、Hergaなど多くの企業がEnOcean技術を採用しています。

主要製品と応用分野

EnOceanの技術は、ビルオートメーション分野で特に活躍しています。照明スイッチや空調制御機器への応用が中心ですが、窓の開閉検知、動体センサー、さらには工場オートメーション用のフットスイッチやボタンなど、多様な製品に利用されています。バッテリーレスであることから、従来の無線スイッチでは実現できなかった幅広い用途への展開が可能になりました。

受賞歴と評価

EnOcean社のユニークな技術は、高い評価を受け、数々の賞を受賞しています。Bavarian Innovation Prize (2002)、Technology Pioneer (2006)、BuildingGreen Top-10 Product (2007)、Elektra European Electronics Industry Awards (2008)など、その実績は目覚ましいものがあります。

EnOceanアライアンス

EnOcean技術を採用する欧州と北米のOEM企業で構成されるEnOceanアライアンスは、2008年4月に設立された非営利団体です。Omnio、Thermokon、Masco、MK Electric、Distech Controls、EnOceanなどが主要メンバーで、2010年12月時点で352社が加入していました。アライアンスのChairmanであるGraham Martin氏は、Zigbee Alliance出身で無線技術に精通しています。

技術の詳細

EnOcean技術は、周囲環境に存在する微弱なエネルギー（振動、太陽光、熱など）を電力に変換して無線信号を送信する「エネルギーハーベスト」技術です。

製品化技術

現在製品化されている技術には、機械的動作、太陽光、照明などが含まれます。特に、機械的動作（スイッチの操作など）を利用した発電技術は、照明スイッチなどに広く採用されています。

開発段階

評価中の技術には振動、回転、温度差などがあり、開発中の技術には空気圧、差圧、電磁波、筋収縮エネルギー、有機化学反応エネルギー、有機素材などが含まれます。

発電部技術

機械的動作を利用した発電部品は、電磁石の原理に基づいています。サイズは約40 x 40 x 10 mm、動作駆動力は7ニュートン（2009年末には5ニュートンモデルもリリース）。設計寿命は最低10万回で、照明スイッチとしては30年以上の使用が見込まれます。

通信技術

EnOceanは、1GHz以下の周波数帯を使用しています。これは、通信帯域の混雑を避けて信頼性の高い通信を実現するためです。欧州、中近東では868MHz、北米とアジアでは315MHzを使用しています。通信プロトコルには、冗長性（最低3回のリトライ）が組み込まれており、安定した通信を実現しています。24ビットのユニークアドレスにより、約17,000個のアドレスを確保可能で、大規模なビルでもアドレス重複を心配する必要がありません。2009年には日本の電波法に適合した製品も発表されました。

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