FACELESS MAN

THE BOOMが1993年8月21日に発表した5枚目のアルバム『FACELESS MAN』は、ボーカルの宮沢和史が前年にミュージカル「ナガランド」に参加し、バリ島を訪れたことがきっかけで生まれた作品です。

アルバム全体が一つの物語として構成されており、アジアのある王国を舞台にした壮大なストーリーが展開されます。音楽性は非常に多彩で、ロックを基盤としながらも、沖縄民謡、ファンク、ゴスペル、ポエットリーディングなど、様々なジャンルの要素が織り込まれています。

制作には、久保田麻琴、朝本浩文、R.J.W.といった外部プロデューサーを迎え、音楽的な幅を広げています。サポートミュージシャンも、これまで以上に多彩な顔ぶれが集結。チト河内のようなパーカッショニストが参加したほか、「いいあんべえ（毛遊び）〜唐船ドーイ（沖縄民謡）」では、チャンプルーズのメンバーと共演し、リーダーの喜納昌吉もスペシャルサンクスとしてクレジットされています。

アルバムと連動した全国ツアー "TOUR FACELESS MAN" (1993年9月4日～1994年1月14日)では、総勢15名を超えるミュージシャンやダンサーが参加し、ミュージカルの要素を取り入れた大規模なコンサートとなりました。前年のミュージカルで宮沢と共演したダンサーも加わり、ステージはより一層華やかでエンターテイメント性の高いものとなりました。

宮沢自身もこの頃から、THE BOOMを単なる4人組バンドではなく、多くのミュージシャンやダンサーを含めた「大所帯のバンド」として認識するようになったと言います。これは、彼らの音楽表現の可能性が大きく広がったことを意味すると同時に、4人だけでは表現しきれない音楽へと進化していったことを示唆しています。

収録曲「目覚めのメロディー」では、前作『思春期』に収録された「憂鬱なファーブル」に続き、ベースの山川浩司がボーカルを担当しています。

2005年8月3日には、デジタルリマスター版が再発売され、ボーナストラックとして、シングル「月さえも眠る夜」のカップリング曲「de ja vu」と、シングル「真夏の奇蹟」に収録されていた「18時」のオリジナルバージョンが追加収録されました。

アルバム『FACELESS MAN』は、THE BOOMの音楽的な冒険心と、多様な文化への探求心が結実した作品と言えるでしょう。彼らの音楽の幅広さと深さを体感できる、重要な一枚です。

外部リンク：
THE BOOMの公式サイト'>THE BOOM MUSIC GALLERY: ファイブ・ディーによるTHE BOOM公式サイト
THE BOOM DISCOGRAPHY: アルバム「FACELESS MAN」の詳細ページ。視聴も可能。

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