FM89.3MHz

ヤクザとミニFM局の奇妙な出会い

2007年、日本の映画界に独特の風を吹き込んだ作品『FM89.3MHz』。小沢仁志主演によるこの映画は、任侠映画とミニFMという、一見すると無関係な要素を巧みに融合させた異色の作品として注目を集めました。

舞台は新宿歌舞伎町。15年の刑期を終え、大川組に復帰した工藤準次（小沢仁志）は、組が借金のカタに取られたビルに居座るミニFM局を、いわばシマとして与えられます。ヤクザ稼業とは程遠いこの状況に、準次は戸惑いを隠せません。

しかし、運命の歯車は回り始めます。アクシデントからDJを務めることになった準次は、意外な才能を発揮。彼の放送は、予想外の反響を呼び、次第に聴取者から人気を集めるようになります。

予想外の展開と人間模様

ミニFM局の運営を通して、準次は様々な人間と出会い、様々な出来事を経験します。舎弟の鈴木太郎（松浦祐也）、自称銀河系アイドルでミニFM局を一人で運営していたゆかタン（浅川稚広）、準次の一人娘である工藤桜（あじゃ）、そして桜の恋人であるDJ志望のナルシー（渋川清彦）など、個性豊かな登場人物たちが物語を彩ります。

また、抗争する組同士を放送の中で手打ちさせるなど、準次はヤクザとしての経験を生かし、思わぬ活躍を見せます。ヤクザの抗争劇を背景に、人間模様が複雑に絡み合い、予想外の展開が連続する、痛快なストーリーが展開されます。

豪華キャストとスタッフ陣

本作には、小沢仁志のほか、松浦祐也、浅川稚広、あじゃ、渋川清彦ら個性豊かな俳優陣が出演。監督は仰木豊、脚本はイケタニマサオが務め、映画音楽は朝枝有が担当しました。

小沢仁志演じる工藤準次は、劇中で挿入歌「新宿夢鴉」を歌唱。この楽曲は、劇場公開時の「アニキの生唄CD付き前売り鑑賞券」に収録された非売品CDとして配布され、セル版DVD『FM89.3MHz』初回盤にも封入特典として収録されるなど、作品に彩りを添えています。

ミニFM局を舞台にした任侠映画

『FM89.3MHz』は、任侠映画の枠にとらわれない、斬新な設定とストーリー展開が魅力の作品です。ヤクザの世界観とミニFM局という意外な組み合わせが、独特の雰囲気を作り出しています。

小沢仁志の演技、個性豊かな登場人物、そして予想外の展開の数々。この映画は、任侠映画ファンのみならず、幅広い観客を魅了する作品と言えるでしょう。2007年1月27日の渋谷シネ・ラ・セットでの初上映以降、DVD化、レンタル化もされ、現在も多くのファンに愛されています。さらに、2007年10月1日には続編『無認可保育園　歌舞伎町ひよこ組』も公開され、その人気は衰えることを知りません。

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