Family Tree DNA

Family Tree DNA

Family Tree DNA（ファミリーツリー・ディーエヌエー、略称: FTDNA）は、アメリカ合衆国テキサス州ヒューストンに本社を置く商業遺伝子検査企業です。米国商務省セーフハーバー認証を取得し、質の高い遺伝子解析を提供しています。特に家系や祖先を追跡する解析に特化しており、父系（Y染色体）、母系（ミトコンドリアDNA）、および両親からの常染色体DNAを用いたサービスを提供しています。健康リスク検査などに重点を置く他社とは異なり、FTDNAは個人のルーツ解明に注力しており、離散した家族の発見や養子の実親探し、遠い祖先の本国親族探しの手助けとなっています。Y染色体およびミトコンドリアDNA解析分野では世界最大のシェアを持ち、200万人以上の顧客を抱えています。現在はMYDNA社の子会社です。

沿革

FTDNAは2000年1月、系図研究家のベネット・グリーンスパンらが設立しました。創業の背景には、グリーンスパン自身の家系研究に行き詰まり、遺伝学を用いた家系解明の可能性を知ったものの、一般向けサービスがない現状を改善したいという思いがありました。設立当初はアリゾナ大学が解析を請け負い、マイケル・ハマー博士も参加。Y染色体STR解析などからサービスを開始しました。2005年にはジェノグラフィック・プロジェクトの解析を担当し、SNP解析が導入されました。2006年からはゲノミクス研究センターを開設し、サンガー法や「Walk Through the Y (WTY)テスト」など高度な解析手法を導入。一般人が未知SNPを発見し、会社が新たな系統として学術的に貢献するスタイルを確立しました。解析拠点を自社研究所へ移管し、サービスを継続的に拡充しました。

サービスと技術

現在、FTDNAはY染色体、ミトコンドリアDNA、常染色体DNAの全タイプを対象に、次世代型シーケンサーを用いた高精度な解析をCLIAおよびCAP規格準拠の自社ラボで行っています。Y染色体解析の主力である「BIG-Y 700」では、Y染色体上の約1500万箇所を詳細に調べ、これまでに全人類のY染色体に関連する5万種類以上の未知SNPを検出し、系統樹の新たな枝を特定しています。

検査プロセス

サンプル採取は、口腔内の粘膜を専用綿棒で擦り取る方式です。申込み後に送付される採取キットを使用し、自分で検体を採取・返送します。オンラインアカウントで進捗を確認でき、結果開示までには通常2〜6ヶ月を要しますが、解析対象の系統や新規SNPの有無で期間は変動します。未知の系統枝まで解析・報告する姿勢は、高い顧客満足度につながっています。

利用者プロジェクトと科学的貢献

FTDNAでは、利用者が認証を受けて特定の集団やテーマに関する共同研究プロジェクトを立ち上げることが可能です。日本人に関連する主なプロジェクトには、日本人の系統枝特定を目指す「ジャパンDNAプロジェクト」、Y染色体D系統を研究する「Y染色体D系統プロジェクト」、日本の歴史人物とハプログループ関連を探る「サムライDNAプロジェクト」などがあります。また、FTDNAは遺伝子系図学において重要な科学的発見にも貢献しており、27万年前に分岐したと推定されるハプログループA00の発見は、Y染色体アダムの出現時期に関する従来の説を見直すきっかけとなりました。

関連情報として、ISOGG、遺伝子系図、ミトコンドリアDNA、Y染色体ハプログループ、ジェノグラフィック・プロジェクトなどが挙げられます。

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