Forsyth-Edwards Notation

Forsyth-Edwards Notation（FEN）は、チェスの盤面における駒の配置状況を記述するための標準的な記法です。FENは、チェスの盤面をテキスト形式で表現できるため、コンピュータチェスにおいて非常に重要な役割を果たしています。

FENの概要

FENは、スコットランドの新聞記者であるデービッド・フォーサイスによって考案され、19世紀頃から一般的に利用されるようになりました。その後、スティーブン・J・エドワーズによってコンピュータで利用できるように拡張されました。FENは、盤面の初期配置をコンパクトに表現できるため、Portable Game Notation（PGN）にとってなくてはならない存在となっています。しかし、FENは千日手に関する情報を保持することはできません。

FENの定義

FENは、スペースで区切られた6つのフィールドで構成されています。

1. 駒配置: 8ランクから1ランクの順に、各ランクをスラッシュ(/)で区切り、各マスに存在する駒を左から右へ記述します。白の駒は大文字（P=ポーン、N=ナイト、B=ビショップ、R=ルーク、Q=クイーン、K=キング）、黒の駒は小文字（p, n, b, r, q, k）で表記します。連続する空きマスは、その数を数字で表します。例えば、6つの空きマス、白ポーン、1つの空きマスがある場合は、「6P1」と記述します。この部分はフォーサイスによって考案されたものです。

2. 手番: 現在の手番が白であれば「w」、黒であれば「b」と記述します。

3. キャスリングの可否: キャスリングが可能な場合は、以下の記号を組み合わせて記述します。複数可能な場合は、可能なものをすべて列挙します。キャスリングが不可能な場合はハイフン（-）を記述します。
K: 白のキングサイドキャスリング
Q: 白のクイーンサイドキャスリング
k: 黒のキングサイドキャスリング
q: 黒のクイーンサイドキャスリング

4. アンパッサン: アンパッサンが可能な場合は、その対象となるポーンが通過したマス目を記述します。アンパッサンが不可能な場合はハイフン（-）を記述します。

5. 半手数: 最後のポーンの移動、または駒の捕獲が発生してからの経過半手数（プライ）を記述します。この値は、50手ルールを判定する際に使用されます。

6. 手数: 現在の手数を記述します。黒の指し手ごとに1ずつ増加します。これは通常の手数（黒が指すたびに１つ増える）を表します。

FENの例

以下に、FENの具体的な例をいくつか示します。

初期配置: `rnbqkbnr/pppppppp/8/8/8/8/PPPPPPPP/RNBQKBNR w KQkq - 0 1`

1. e4 の直後: `rnbqkbnr/pppppppp/8/8/4P3/8/PPPP1PPP/RNBQKBNR b KQkq e3 0 1`

1. ... c5 の直後: `rnbqkbnr/pp1ppppp/8/2p5/4P3/8/PPPP1PPP/RNBQKBNR w KQkq c6 0 2`

2. Nf3 の直後: `rnbqkbnr/pp1ppppp/8/2p5/4P3/5N2/PPPP1PPP/RNBQKB1R b KQkq - 1 2`

チェス960におけるFEN

チェス960（フィッシャーランダムチェス）では、駒の初期配置が標準チェスと異なるため、FENは非常に重要な役割を果たします。チェス960では、キングとクイーンの位置がランダムになるため、キャスリングの可否を表す3番目のフィールドで、K, Q, k, q の代わりに A, H, a, h という文字を使用する場合があります。この形式はShredder-FENと呼ばれることがあります。

まとめ

FENは、チェスの盤面をテキストで表現するための強力なツールであり、コンピュータチェスやチェス関連のソフトウェアで幅広く利用されています。FENを理解することで、チェスの盤面状況を正確に記録し、分析することが可能になります。

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