GDPデフレーター

GDPデフレーターとは

経済学におけるGDPデフレーターとは、ある経済圏において、一定期間（通常は1年間）に国内で生産されたすべての最終財とサービスの価格水準を測る指標です。これは、名目GDPから物価変動の影響を取り除いた実質GDPを算出するために用いられる物価指数であり、国内の総合的な物価の変動を把握する上で重要な役割を果たします。

名目GDPと実質GDP

名目GDP: その年の市場価格で評価したGDPです。物価変動の影響を受けます。
実質GDP: 基準年の価格で評価したGDPです。物価変動の影響を取り除いています。

GDPデフレーターは、名目GDPを実質GDPで割ることで算出され、物価変動の程度を表す指標として解釈されます。この数値の増加率は、インフレーション（物価上昇）やデフレーション（物価下落）の度合いを示します。

GDPデフレーターの算出

GDPデフレーターは、以下の計算式で求められます。


GDPデフレーター = (名目GDP / 実質GDP) × 100


名目GDPをGDPデフレーターで割って100倍すると、実質GDPの価額が得られます。

インプリシット・デフレーター

日本の国民経済計算では、GDPデフレーターを直接作成するのではなく、構成項目ごとにデフレーターを作成し、それを用いて実質値を求めます。そして、名目値を各構成項目の実質値の合計で割ることで逆算します。この方法で算出されたデフレーターを「インプリシット・デフレーター」と呼びます。具体的には、ある支出項目の個別品目iの基準年におけるデフレーターをPiとし、品目iの名目値をXiとすると、当該支出項目の名目値（X）はΣiXi、実質値(XR)はΣiXi/Piとなります。そして、当該支出項目のデフレーター（P）はX/XRとして求められます。

GDPデフレーターの特徴

バスケットの変動性: GDPデフレーターは、消費者物価指数（CPI）とは異なり、固定された商品やサービスのバスケットに基づきません。人々の消費や投資のパターンに応じてバスケットが変化します。つまり、消費者が購入する商品やサービスの変化が、GDPデフレーターに反映されるという特徴があります。
物価変動の捕捉: 特定の財やサービスの価格変動だけでなく、国内で生産されるすべての財・サービスの価格変動を包括的に捉えます。これにより、経済全体の総合的な物価変動を把握することができます。

消費者物価指数（CPI）との違い

GDPデフレーターと消費者物価指数は、どちらも物価の変動を測る指標ですが、以下の点で違いがあります。


GDPデフレーターは、国内で生産されるすべての財・サービスの価格を反映するため、より広範囲な物価変動を捉えることができます。一方、CPIは消費者が直接購入する商品やサービスの価格変動を反映するため、家計の物価感覚に近い指標と言えます。また、CPIは輸入原材料価格の影響を受けやすいのに対し、GDPデフレーターはそうではありません。

景気との関係

GDPデフレーターは、国内の物価水準を反映しやすいため、景気の過熱度合いを判断する上で重要な指標となります。景気が過熱すると、物価が上昇する傾向がありますが、この物価上昇をGDPデフレーターによって確認することが可能です。消費者物価指数とGDPデフレーターの乖離は、しばしば政策判断の議論を呼ぶ要因となります。特に金融政策の決定において、どちらの指標を重視すべきかという議論が専門家の間で交わされることがあります。

各国のGDPデフレーター統計

GDPデフレーターは、各国の政府や統計機関によって発表されています。

日本: 内閣府
アメリカ: アメリカ合衆国商務省経済分析局 (BEA)
イギリス: 英国統計局
カナダ: カナダ統計局

これらの機関が発表するデータは、各国の経済状況を分析する上で重要な情報源となります。

まとめ

GDPデフレーターは、経済全体の物価水準を測るための重要な指標であり、インフレ・デフレの動向を把握し、経済政策を立案する上で不可欠な情報を提供します。消費者物価指数との違いを理解し、それぞれの指標が示す意味を適切に解釈することが重要です。

関連項目

名目と実質 (経済学)
物価
ヘドニック指数
消費者物価指数
国内総生産
インフレーション
* デフレーション

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