GeoGebra

GeoGebra（ジオジェブラ）

GeoGebraは、小学校から大学水準までの数学や科学の学習および指導のために開発された、動的な特性を持つ統合型ソフトウェアです。幾何学、代数学、統計学、解析学といった複数の数学分野を同一の環境内で扱うことが可能で、それぞれの要素が密接に連携しています。

多様なプラットフォームに対応しており、Windows、macOS、LinuxといったデスクトップOS向けアプリケーション、iPad、Android、Windows (UWP) 向けタブレットアプリ、そして特別なインストールなしにウェブブラウザ上で動作するHTML5ベースのウェブアプリケーションとして提供されています。利用者は自身の環境に合わせて最適な形でGeoGebraを利用できます。

開発経緯

GeoGebraの開発は、Markus Hohenwarter氏がザルツブルク大学での学位論文の一部として2001年に開始しました。その後、フロリダ・アトランティック大学（2006年～2008年）、フロリダ州立大学（2008年～2009年）を経て、現在はリンツ大学を中心に開発が進められています。この開発プロセスには、世界各国のオープンソース開発者や翻訳者が協力しており、国際的なプロジェクトとして成り立っています。クラウドファンディングサービスであるKickstarterでのキャンペーン成功を受けて、iPadやAndroid、Windows Store向けのアプリ版開発を含む機能拡張が進められました。また、2013年には、Bernard Parisse氏によって開発された数式処理システムGiacがGeoGebraのCAS（Computer Algebra System）機能として統合され、その計算能力が大幅に強化されています。

GeoGebraプロジェクトは、オーストリアのリンツを拠点とする企業組織と非営利組織の両輪で運営されており、ソフトウェア自体に加えて、ユーザーコミュニティに対してクラウドサービスを提供しています。

主な機能

GeoGebraの大きな特徴は、対話的な操作を通じて数学的対象を動的に扱える点です。点、ベクトル、直線、曲線、多角形、円錐曲線、不等式、関数など、多様な数学的対象を扱えます。これらの対象は、マウス操作やタッチ操作、あるいはコマンド入力によって対話的に、かつ動的に変更可能であり、グラフや図形を動かすと関連する数式や数値もリアルタイムに変化するなど、数学的な関係性を視覚的に理解するのに役立ちます。

数値計算機能に加え、CAS統合により、変数を用いた記号計算や、関数の微分・積分、方程式の根や極値の算出といった高度な解析的計算も実行可能。コマンド入力時には便利な入力補完機能が利用できます。幾何学的な定理の性質を視覚的に探求し、その証明への理解を深める手助けともなります。

主な機能としては以下の要素が統合されています。

2次元および3次元に対応した対話的な幾何学環境
数値を扱える統合スプレッドシート
記号計算が可能な統合CAS (Computer Algebra System)
統計分析や微積分計算のためのツール群
操作を自動化するためのスクリプト言語

GeoGebra Materials Platform

GeoGebra Materialsは、GeoGebraで作成された学習教材を共有するための公式クラウドサービスです。かつてはGeoGebraTubeという名称で2011年6月に開設され、2016年に現在の名称に変更されました。教師や学生は、GeoGebraで作成した動的なアプレットを含む教材をこのプラットフォームに直接アップロードし、他のユーザーと共有することができます。

サービスは改良と機能拡張を重ね、2016年4月時点で100万を超えるリソースが登録されており、ワークシート、インタラクティブなシミュレーション、数学ゲーム、電子書籍など、多岐にわたる約400,000以上の教材が検索・利用可能です。これにより、世界中の教育者が作成した質の高い教材を手軽に活用できます。

エクスポート機能

作成した教材やグラフ、図形は、静止画（PNG、PDF、EPSなど）やアニメーションGIFといった多様な形式でエクスポート可能です。また、システムのクリップボードを介して他のアプリケーションに画像を貼り付けたり、Windows Metafile形式でOfficeアプリケーションに直接インポートしたりすることもできます。さらに、プロフェッショナルな文書作成に用いられるLaTeXでの利用を想定し、PSTricks、PGF/TikZ、Asymptote形式のコードを生成するオプションも提供されており、外部ソフトウェア（例：Inkscape）での編集や高品質な印刷出力にも対応しています。

ライセンスとコミュニティ

GeoGebraのソースコードはGNU General Public License（GPL）の下で公開されており、これにより自由に利用、改変、再配布が可能です。ソフトウェア以外のコンテンツ、例えばGeoGebra Materials上の教材などは、Creative Commons BY-NC-SAライセンスが適用されています。ただし、GeoGebraの商用利用については、別途特別なライセンス契約や共同作業契約が必要となります。

GeoGebra Groupの非営利部門であるInternational GeoGebra Institute (IGI) は、GeoGebraの普及と発展を支える国際的なコミュニティ活動を調整しています。ここでは、教師、学生、ソフトウェア開発者などが協力し、ソフトウェア開発、多言語への翻訳、ユーザーサポート、各種プロジェクトの企画・実施など、GeoGebraに関連する様々な活動を担っています。また、IGIネットワークの一員である各地域のローカルユーザーグループは、GeoGebra Materialsを通じて無償教材を共有したり、ワークショップを開催したり、地域ごとのプロジェクトに取り組んでいます。さらに、特定の基準に基づき、各地域のGeoGebraユーザー、専門家、トレーナーの認定も行っています。これらの活動を通じて、GeoGebraは世界中の教育現場で広く活用されています。

参考文献・外部リンク

阿原一志『作図で身につく双曲幾何学：GeoGebraで見る非ユークリッドな世界』共立出版、2016年5月。
GeoGebra公式サイト（英語）
GeoGebra日本（日本語紹介サイト）
* GeoGebra Materials Platform

（上記参考文献・外部リンクは例示であり、インプットに基づいています）

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