H-IIBロケット

H-IIBロケットの概要

H-IIBロケットは、日本の宇宙航空研究開発機構（JAXA）と三菱重工業が共同で開発した液体燃料の使い捨てロケットです。主に国際宇宙ステーション（ISS）への物資補給を目的として設計されました。このロケットは日本の衛星打ち上げの自律性を象徴する重要な存在で、9回の打ち上げをすべて成功させた実績を持ちます。H-IIAロケットの技術を活用し、さらなる能力の向上を図ったことが特長です。

開発経緯

H-IIBロケットの開発は1990年代初頭に始まりました。1994年に予備設計が行われ、1995年には概念設計が完成しましたが、1997年に宇宙ステーション用の補給機HTVの開発に伴い、本格的な開発がスタートしました。当初のHTVは15トンの質量を想定していましたが、標準型のH-IIAロケットでは打ち上げができないため、1996年から新たな増強型の開発が進められました。

しかし、1999年のH-IIロケット8号機の失敗を受け、H-IIAロケットの開発が優先されることとなり、増強型の開発は凍結されました。その後、2002年に新たな能力向上の計画が立てられ、2005年にはH-IIBロケットとして開発が進行しました。

開発費用

従来のロケットの開発方式とは異なり、H-IIBロケットではJAXAと三菱重工が開発費を分担し、運用開始後は三菱重工が負担した分を販売価格に上乗せして回収する仕組みが採用されました。最終的なプロジェクト予算は418億円に達し、比較的低コストな開発が実現されました。

開発担当企業

H-IIBロケットの開発には多くの企業が関与しました。JAXAはシステム仕様の設定や高リスクの開発試験を行い、三菱重工は詳細設計や製造を主導しました。IHIや川崎重工業、NECなどがそれぞれの専門分野において重要な役割を果たしました。

構成と諸元

H-IIBロケットは約100万の部品から成り、外壁や推進剤タンクにはアルミニウム合金が使われています。固体ロケットブースタ（SRB-A）や推進剤の仕様も細かく設計されています。第一段エンジンには2基のLE-7Aエンジンが搭載され、直径は5.2メートルに拡大されました。これにより、推進力が大幅に増大しています。

打ち上げ実績

H-IIBロケットはすべて種子島宇宙センターから打ち上げが行われ、すべてのミッションが成功しています。特にHTVの打ち上げにおいては、国際宇宙ステーションへの重要な物資の供給を行い、その運用に寄与しました。

商業打ち上げの可能性

H-IIBは、HTVだけでなく静止衛星の打ち上げも見込まれており、高い能力を持っています。商業打ち上げ市場において競争力を持つロケットとして期待されていましたが、2020年5月に運用を終了しました。後継機はH3ロケットが予定されています。

実物大展示と評価

H-IIBロケットの実物大モデルが名古屋市科学館で展示されています。また、開発に関与した企業は産業技術大賞を受賞するなど、その成果が評価されています。H-IIBロケットの開発は、日本の宇宙開発における重要なマイルストーンとなりました。

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