HIGHLEG JESUS

HIGHLEG JESUS

HIGHLEG JESUS（ハイレグジーザス）は、演出家・俳優である河原雅彦（かわはら まさひこ）が中心となって活動した日本の劇団およびパフォーマンス集団です。1992年に結成され、10年間にわたり精力的に活動した後、2002年に解散しました。

概要

1992年6月、「SEX、DRUG、R&R、そして演劇」をスローガンに、河原雅彦が旗揚げの中心人物となり活動を開始しました。当初は東京都新宿などでゲリラ的な路上パフォーマンスを展開しており、そのスタイルは注目を集めました。同年12月には初の劇場公演「HIGHLEG SENSETIONS!」を上演し、本格的な活動へと移行しました。

ほとんどの公演で構成・演出を河原雅彦自身が担当しており、「エロ・バカ・ショック」を基調とした独特な世界観を追求しました。そのパフォーマンスは従来の演劇の枠にとらわれず、「ネオ演芸」と称され、幅広い層からの関心を集めました。特に熱狂的なファンが多く、「ハイレグ・マニア」と呼ばれる支持者を生み出すに至りました。また、女性観客からの支持も厚かったことが特筆されます。

HIGHLEG JESUSの舞台は、その過激かつポップな表現で知られています。予期せぬタイミングで男性俳優が全裸となって客席に現れるなど、観客を巻き込む、あるいは挑発するような演出が多用されました。また、女性観客をステージに上げ、男性出演者の身体の一部に触れさせるなど、現代の基準ではセクハラと見なされかねないような、倫理的な境界線を曖昧にするような演出も見られました。彼らの作品は、他の劇団の公演やテレビドラマ、映画などを性的にパロディ化して取り入れたり、放送禁止用語を意図的に連発したりするなど、既存の価値観や権威に対する挑戦的な姿勢を示していました。こうしたアプローチは、「特定のメッセージ性を直接的に伝えるのではなく、表現そのもののインパクトによって何かを訴えかける」という意味で、「メッセージなきメッセージ」と評されることもありました。その表現の本質については、「エロスというよりも、より即物的で生々しい『エロ』そのものを追究していた」という分析もあります。

活動期間中、精力的に公演を行い、1993年の「いかれぼんち」（野村朋子作・演出）や、河原以外のメンバーが作・演出を手掛けたプロデュース公演、宮藤官九郎との共作「お茶の魔」なども上演されました。また、長塚圭史（阿佐ヶ谷スパイダース）作・演出の「テキサス」はフジテレビのドラマ「演技者。」として映像化され、後年河原自身の演出でPARCO劇場にて再演されるなど、劇団外への影響力も持ちました。

2002年12月、公演「LOVE JESUS ～星をはずす日～」をもって劇団は解散しました。解散後、所属していた俳優の多くは、現在芸能事務所「ハイレグタワー」に所属し、それぞれの活動を続けています。メンバーの中には、コントユニット「エッヘ」で活動する山田伊久磨や森本訓央、劇団ベターポーヅの加藤直美とのユニット「NAィKI」を結成した岸潤一郎、劇団宝船を主宰する新井友香、動物電気を主宰する政岡泰志、そして作詞家として著名な小林愛（ゆるめるモ!への楽曲提供などで知られる）などがいます。

劇団の映像作品は、1996年以降、映像作家の奥秀太郎が手掛けたものが多くあります。また、大人計画所属の宮藤官九郎は、HIGHLEG JESUSの公演にゲスト出演したり、共作を行ったりと、深く関わっていました。河原雅彦は後に宮藤官九郎脚本の舞台「鈍獣」を演出するなど、解散後も交流は続いています。

HIGHLEG JESUSは、その革新的なパフォーマンスと過激な表現で、1990年代の日本の演劇シーンにおいて独自の地位を確立し、強い印象を残しました。

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