HQ-9 (ミサイル)

HQ-9 (紅旗9) 防空ミサイル

HQ-9（紅旗9、輸出名: FT-2000またはFD-2000）は、中華人民共和国が独自に開発した、地対空および艦対空ミサイルシステムです。高高度から中高度までの幅広い空域における脅威を迎撃する能力を持つ、中国の新しい世代を代表する防空ミサイルと位置づけられています。

このミサイルの開発は1980年代に始まり、1990年代には完成に至ったとされています。開発にあたっては、ロシア製のS-300PMUシステムで使用されている5V55シリーズのミサイルが技術的な基礎として参考にされました。さらに、誘導システムの一部の開発においては、アメリカ合衆国のパトリオットミサイルが持つ技術が影響を与えた、あるいは組み込まれたとも指摘されています。これらの経緯から、HQ-9は東西の技術が融合した設計思想を持つミサイルシステムと言えます。

HQ-9システムは基本型に加えて、複数の派生型が存在します。代表的なものとしては、射程を延伸したHQ-9B（紅旗9B）があります。また、艦艇からの発射に対応するために開発されたHHQ-9A（海紅旗9A）および、HQ-9Bの艦載型であるHHQ-9B（海紅旗9B）も開発されました。これらの艦載型ミサイルは、中国人民解放軍海軍の主要な水上戦闘艦艇、特に最新鋭の大型駆逐艦に搭載されており、陸上発射型とほぼ同等の迎撃能力を発揮すると考えられています。

HQ-9システムの主要な性能諸元は以下の通りです。

全長: 6.8メートル
発射重量: 1,300キログラム
実用迎撃高度: 25メートルから30,000メートル（30キロメートル）
最大射程:
基本型: 7キロメートルから125キロメートル
HQ-9B型: 最大200キロメートル
飛翔速度: 最大マッハ6
誘導方式: 慣性誘導と指令誘導を組み合わせた中間誘導に加え、終末段階ではミサイル自身が目標を追尾するアクティブ・レーダー・ホーミング方式を採用しています。艦載型のHHQ-9A/Bでは、目標追尾情報がミサイル経由でも共有される機能が加わっています。

中国人民解放軍海軍においては、多数の駆逐艦にHQ-9またはその派生型であるHHQ-9A/Bが搭載され、艦隊防空の中核を担っています。具体的には、052C型（蘭州級）、052D型（昆明級）、そして大型で高い戦闘能力を持つ055型（南昌級）といった最新またはそれに準じるクラスの駆逐艦に標準的な装備として配備されています。

国際市場においては、輸出名であるFD-2000またはFT-2000として提供されています。複数の国がこのシステムに関心を示しており、現在運用している国も存在します。2024年時点で、中央アジアのトルクメニスタン空軍が4基のFD-2000システムを運用していることが確認されています。また、2023年時点の情報によれば、同じく中央アジアのウズベキスタン空軍および防空軍も4基のFD-2000システムを保有しています。一方で、トルコはかつてHQ-9の採用を検討し契約交渉を進めていましたが、最終的には2015年にこの計画を撤回したという経緯があります。

HQ-9は、中国が独自の技術と海外からの技術導入を組み合わせて開発した、現代的な長射程防空ミサイルシステムであり、その性能と汎用性から、中国本土および展開する海軍部隊の防空能力を支える重要な要素となっています。

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