HUMANITY (ゲーム)

概要

『HUMANITY』（ヒューマニティ）は、クリエイティブスタジオtha LTD.が開発を手掛けた、独創的な世界観を持つパズルゲームです。著名なデザイナーである中村勇吾氏にとって、本作が初めての本格的なゲーム制作への挑戦となりました。ゲームクリエイターとして知られる水口哲也氏が率いるEnhanceが、本作のレベルデザイン、プロデュース、パブリッシングといった主要な役割を担っています。

あらすじ

物語は、主人公が突然、一匹の柴犬の姿になって目覚めるという衝撃的な出来事から始まります。混乱する主人公の頭の中には、ある声が響き渡り、その指示に従って、自我を失い彷徨う大勢の人々を特定の場所へと導くことになります。やがて、主人公は「実験室」と呼ばれる謎めいた空間へと移動。そこで、頭の中で指示を与えていた声の正体が「BLUE CORE」と呼ばれる発光する球体であり、主人公をこの実験における「最初に導く者」として選んだこと、そしてこの空間で遂行される「実験」に協力することが自らの使命であることを告げられます。

実験が進行する中で、事態は予期せぬ方向へ向かいます。人間とは似て非なる存在であり、全く異なる原理で動く「OTHERS」という敵対的な勢力が突如として出現し、人々に攻撃を仕掛け始めます。この危機に対抗するため、主人公はかつて自我を失っていた人々に対して、銃や剣といった武器を持たせ、共に立ち向かうことを決意します。単なる誘導ゲームから一転、人々を武装させて敵に挑むという、物語は思わぬ展開を見せていきます。

ゲームシステム

本作のゲームプレイは、プレイヤーが柴犬の視点からステージ全体を見下ろし、集団行動を取る大勢の人々を操作するという特徴的なものです。基本的な操作は、プレイヤーがステージ上の指定された場所に「コマンド」と呼ばれる様々な種類のアイテムを設置することです。人々は自動的に直進しますが、これらのコマンドによって方向転換させたり、ジャンプさせたり、特定の行動を取らせたりすることで、ステージ内の障害物を避け、罠をクリアし、最終的な目標である「光」（ゴール）へと導いていきます。

各ステージには、「GOLDY」と呼ばれる金色の巨大な存在が登場します。これらのGOLDYをゴールへと導くことに成功すると、その数に応じてプレイヤー（柴犬）は新たな行動能力を獲得したり、人々をカスタマイズするための豊富な種類のコスチュームやスキンといった報酬を得ることができます。これらの報酬は、ゲームを進める上でのモチベーションとなり、またゲームクリア後も楽しむ要素を提供しています。

さらに、本作にはプレイヤーが自由にオリジナルのステージを設計できるパワフルなエディットモードが搭載されています。作成したステージはオンラインを通じて世界中の他のプレイヤーと共有することが可能であり、これにより公式ステージ以外にも無限とも言える量のパズルに挑戦することができます。他のプレイヤーが作った独創的なステージをプレイしたり、自身のアイデアを形にして公開したりと、尽きることのない遊び方を提供しています。

開発背景と関連企画

本作の開発にあたり、デザイナーの中村勇吾氏は、空を舞う鳥の群れが一斉に方向転換する様子など、多数の個体が集合体として振る舞う「群衆の動き」から強いインスピレーションを得たことを語っています。この「群衆シミュレーション」的な思考が、ゲームシステムの根幹に大きな影響を与えています。

ゲームの発売に先駆けて、その世界観を現実世界で体験できるユニークなAR企画が実施されました。2021年5月12日から同年6月18日まで開催された「HUMANITY -AR EXPERIMENTS-」です。これは、東京の六本木ヒルズ森タワー前に位置する66プラザに設置されたARマーカーをスマートフォンなどでスキャンすることで、ゲーム内に登場する自我を失った人々がAR技術によって現実の風景の中に出現するというもので、多くの人々にゲームへの興味を喚起させました。この企画は、単なるゲームのプロモーションに留まらず、拡張現実技術の新たな活用事例としても注目を集めました。

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