Happy Time Happy Song

『Happy Time Happy Song』（ハッピー・タイム・ハッピー・ソング）は、日本の音楽シーンにおいて独自のスタイルを確立しているシンガーソングライター、KANによって世に送り出された通算26作目のシングル盤です。この作品は、1999年の幕開け間もない2月5日にリリースされました。

楽曲構成

このシングルは、以下の2曲を収録しています。

- Happy Time Happy Song
- 女神 VENUS （Bon Marché）

表題曲「Happy Time Happy Song」

シングルのタイトルを冠する表題曲「Happy Time Happy Song」は、KAN自身が作詞と作曲を手掛けています。編曲は、KANと長年にわたり彼の音楽制作をサポートしてきた小林信吾氏との共同作業によって行われました。この楽曲は、当時テレビ朝日系列で放送されていた人気バラエティ番組『ナイナイナ』のテーマソングとして採用され、番組のオープニングやエンディングを彩りました。若手人気お笑いコンビ、ナインティナインが司会を務めたこの番組は、深夜帯ながら多くの視聴者から支持を受けており、その主題歌として流れることで「Happy Time Happy Song」も広くお茶の間に届けられました。明るくポジティブなタイトルが示すように、この楽曲もまた、聴く者の心を軽やかにするような、希望に満ちた雰囲気を持っていることがうかがえます。

カップリング曲「女神 VENUS （Bon Marché）」

カップリングには、「女神 VENUS （Bon Marché）」が収められています。特筆すべきは、楽曲の表記にある「Bon Marché」という名義です。これは、KANが音楽的な遊び心から創り出した架空のフレンチ・ポップ・デュオという設定の別名義であり、フランスのシャンソンやポップスを意識した楽曲を発表する際に用いられました。

この「女神 VENUS」は、作詞・作曲の名義が「Veau」となっていますが、これもまたKANのペンネームの一つです。Veauはフランス語で「子牛」を意味し、KANというアーティスト名（動物園の象に由来するという説もある）に通じるネーミングセンスが感じられます。編曲も「Bon Marché」名義で行われており、これは実質的にKAN自身、あるいはこの名義のコンセプトに基づいて制作チームが担当したことを示しています。表題曲とは趣を異にする、異国情緒漂う洒落たサウンドは、KANの多様な音楽性を浮き彫りにしています。通常、シングルのカップリングは表題曲の延長線上にあることが多いですが、このように全く異なるコンセプトを持つ別名義の楽曲を収録することで、リスナーに新鮮な驚きを提供すると同時に、アーティストKANの懐の深さを示す一例となっています。

シングルとしての位置づけ

1999年という年は、まさに世紀末であり、音楽シーンも多様化が進んでいました。KANは、大ヒット曲「愛は勝つ」で広くその名を知られる存在となっていましたが、その後も単なるヒットメーカーに留まらず、実験的な試みや、音楽的な探求を続けるアーティストとして活動していました。この『Happy Time Happy Song』シングルは、キャッチーな表題曲でメディアとの接点を保ちつつ、カップリングでは自身の別名義プロジェクトを披露するという、当時の彼の活動の一端を示す作品と言えます。タイアップによって多くの人々に届く楽曲を手掛ける一方で、自身のクリエイティビティを様々な角度から表現することを怠らないKANの姿勢がよく現れています。

まとめ

『Happy Time Happy Song』は、テレビ番組のテーマソングとして広く親しまれた表題曲と、KANのユニークな別名義プロジェクトであるBon Marchéによるカップリング曲を収録した、彼のキャリアにおける重要なシングルの一つです。どちらの楽曲も、その時代の空気感を取り入れつつ、KANならではのメロディセンスやアレンジの妙が光る作品であり、当時のリスナーやファンにとっては、彼の活動を追う上で欠かせない一枚と言えるでしょう。このシングルを通して、KANのポップな側面と、音楽的な探求心、そして遊び心に満ちた多才な魅力が改めて感じられます。

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