HarmonyOS

HarmonyOS：ファーウェイが開発した分散型オペレーティングシステム

HarmonyOS（ハーモニーOS）は、中国のテクノロジー企業ファーウェイによって開発された、マイクロカーネルベースの分散型オペレーティングシステムです。当初はIoTデバイス向けに開発されましたが、現在はスマートフォンやタブレットなど、幅広いデバイスに搭載されています。一部はオープンソースとして公開されており、その高い性能と柔軟性から、Androidに代わるOSとして世界中で注目を集めています。

名称の由来

HarmonyOSの正式な英語名称は「Harmony Operating System」です。中国語では「鸿蒙操作系统（ホンモンOS）」と表記されます。ファーウェイの消費者事業CEOである余承東氏は、「Hóngméng」という発音が英語圏で難しいため、発音が似ている「Harmony」という単語を英語名に採用したと述べています。「鴻蒙」は古代中国の神話に登場する言葉で、宇宙が形成される以前の混沌とした状態を意味します。

開発の歴史

ファーウェイがHarmonyOSの開発を開始したのは2012年のことです。アメリカ政府による経済制裁をきっかけに開発はさらに加速し、Androidが利用できなくなった場合の「プランB」として位置づけられるようになりました。当初は「Hongmeng OS」という名称で一部メディアに報じられましたが、これは「HarmonyOS」のコードネームであり、最終的に正式名称として「HarmonyOS」が採用されました。

HarmonyOS 1.0

2019年8月9日、「Huawei Developer Conference 2019（HDC 2019）」でHarmonyOS 1.0が正式に発表されました。ファーウェイは、HarmonyOSを、マイクロカーネルベースの分散オペレーティングシステムと位置づけ、リアルタイムリソース割り当てや高速なプロセス間通信を特長としています。AndroidのAPKパッケージを移植できるコンパイラ「ARK」も搭載され、開発者は様々なデバイスに柔軟にソフトウェアを展開できるようになりました。

HarmonyOS 2.0

2020年9月10日のHDC 2020で発表されたHarmonyOS 2.0は、IoTデバイスだけでなくモバイルデバイスにも対応し、「すべてのデバイスを接続する」というコンセプトを掲げました。地図アプリ「Petalマップ」も発表され、2021年2月には折り畳みスマートフォン「HUAWEI Mate X2」への搭載が決定。同年6月には、スマートフォンへの正式採用が発表され、既存の機種へのアップデートも提供されました。

HarmonyOS 3.0

2022年7月27日に発表されたHarmonyOS 3.0では、プライバシーとセキュリティの強化、パフォーマンスの向上が図られました。対応端末はHarmonyOS 2.0とほぼ同じですが、一部機種は対象外となっています。日本向けには、タブレット端末「MatePad 11」などにアップデートが提供されています。

HarmonyOS 4.0

2023年8月4日、HDC 2023でHarmonyOS 4.0が正式発表されました。Ark Engineのアップグレードによりシステムがよりスムーズになり、通知パネルの変更やプライバシー機能の向上が行われました。プロセッサにKirin990以上を搭載した機種に配信されています。

HarmonyOS NEXT

2023年8月に開発者向けに発表されたHarmonyOS NEXTは、Android Open Source Project（AOSP）のコードを削除し、HarmonyOS専用のアプリのみをサポートする完全な独自OSです。これによりコードが大幅に削減され、システムパフォーマンスやエネルギー効率、セキュリティが向上しました。2024年には開発者向けリリース候補版、そして製品版が公開予定です。

HarmonyOSの利用状況

スマートフォン・タブレット

HarmonyOSは、ファーウェイ製のスマートフォンやタブレットに搭載されています。中国市場を中心に展開されており、2021年以降に販売された機種だけでなく、過去の機種にもアップデートが提供されています。2021年9月には、1億台以上のデバイスでHarmonyOSへのアップデートが行われたと発表されました。

スマートウォッチ

ファーウェイ製のスマートウォッチやスマートバンドにもHarmonyOSが採用されています。これらのデバイスでは、健康管理や通知機能など、さまざまなアプリが利用可能です。

自動車

HarmonyOSは、自動車分野にも進出しています。ファーウェイと共同開発された車両に搭載されているほか、外部企業にも提供されており、インフォテインメントシステムや運転支援システムなどに活用されています。搭載車種は、ArcFox α-S Hi、AITO 問界M5、Luxeed 智界S7など多岐にわたります。

まとめ

HarmonyOSは、ファーウェイが長年培ってきた技術力を結集した、革新的なオペレーティングシステムです。当初はIoTデバイス向けとして開発されましたが、現在はスマートフォンや自動車など幅広い分野に進出しています。今後、HarmonyOSがどのように発展し、私たちの生活をどのように変えていくのか、その動向から目が離せません。

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