I LOVE YOU〜BALLADE BEST

I LOVE YOU〜BALLADE BEST

『I LOVE YOU〜BALLADE BEST』は、日本のシンガーソングライター、尾崎豊が遺した数々の名曲の中から、心に響くバラードに焦点を当てて編纂されたベストアルバムです。2011年4月6日にソニー・ミュージックレコーズよりリリースされました。このアルバムは、尾崎豊の没後20年という節目の年に展開された特別企画「“尾崎豊”20th Memorial Years」のスタートを飾る作品として企画されました。

概要

このベストアルバムは、尾崎豊の情感豊かなバラード世界を集約することを目指して制作されました。彼のキャリアを代表する楽曲として広く知られる「I LOVE YOU」や「OH MY LITTLE GIRL」といった普遍的な愛を歌った名曲はもちろんのこと、ファンにとっては特に価値のある音源も多数収録されているのが特徴です。具体的には、音楽作品とは異なる形で発表されたポエトリー・リーディング・アルバムから楽曲や、生前に公式発表されなかった未発表音源集に収められていた楽曲なども含まれており、尾崎豊の多様な表現活動の広がりを感じることができます。単なるヒット曲集に留まらない、彼のバラードにおける深淵な世界観を網羅した選曲と言えるでしょう。

収録曲

DISC1には、選び抜かれた全15曲が収録されています。これらの楽曲は、尾崎豊が発表したオリジナルアルバムや、詩の朗読と音楽を融合させたポエトリー・リーディング作品、さらには未発表音源集など、多岐にわたる音源からセレクトされています。彼の初期を代表するアルバムからは、デビュー作『十七歳の地図』（1983年）より「I LOVE YOU」と「OH MY LITTLE GIRL」が、セカンドアルバム『回帰線』（1985年）より「ダンスホール」、「群衆の中の猫」、「Teenage Blue」、「卒業」が、そしてサードアルバム『壊れた扉から』（1985年）からは「ドーナツ・ショップ」と「Forget-me-not」といった、若き尾崎の切実なメッセージが込められた楽曲が収められています。活動後期にあたるアルバム『誕生』（1990年）からは、「LONELY ROSE」、「永遠の胸」、「MARRIAGE」が選ばれ、円熟期を迎えた彼のバラード表現を聴くことができます。また、生前最後にリリースされた『放熱への証』（1992年）からは、「Mama, say good-bye」が収録されています。

さらに特筆すべきは、彼の言葉の世界を音楽と融合させたポエトリー・リーディング・アルバムからの選曲です。2006年に発表された『真空の中でも嵐は起こる』からは「四月の雨」が、『巨人の輪郭』（同年発売）からは「小さなアートショップ」が収められており、詩人としての側面も持つ彼の表現を多角的に捉えることができます。そして、未発表音源集として1996年にリリースされたアルバム『無題』に収録されていた「もうおまえしか見えない」も含まれており、これらの楽曲群を通して、尾崎豊が描いた様々な感情や情景を改めて感じ取ることができる構成となっています。

初回生産限定盤

本作は通常盤に加え、初回生産限定盤もリリースされました。初回生産限定盤には特典としてDVDが付属します。このDVDには、尾崎豊がその生涯で最後に敢行したライブツアー「BIRTH TOUR」から、1991年5月20日に横浜アリーナで行われた公演より、「僕が僕であるために」のライブ映像が収録されています。この映像は、鬼気迫るパフォーマンスで観客を圧倒する彼の姿を捉えており、尾崎豊のライブアーティストとしての凄みを伝える大変貴重な記録となっています。没後20年という節目に、ファンが求めていた貴重な映像が特典として付けられたことは、大きな反響を呼びました。

意義

『I LOVE YOU〜BALLADE BEST』は、尾崎豊の代表的なバラードを網羅しつつも、オリジナルアルバムの枠を超えた多様な音源からの選曲によって、彼のバラード世界全体の広がりと深さを示す企画盤です。没後20年という節目にリリースされたことで、改めて多くのリスナーに尾崎豊というアーティストが残した音楽遺産の大きさを再認識させるきっかけとなりました。彼の音楽に初めて触れる世代から、青春時代を彼の歌と共に過ごしたファンまで、幅広い層の人々にとって、尾崎豊の世界に深く分け入るための重要な導入となる一枚と言えるでしょう。このアルバムは、時を経ても色褪せない尾崎豊のメッセージとメロディが、今なお多くの人々の心に響き続けていることを証明しています。

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