ICタグ

ICタグ：概要と課題

ICタグ（アイシータグ）は、RFID（Radio Frequency Identification）技術を用いた小型の電子装置です。ICタグリーダーから発せられる電波によって微弱な電力を得て動作し、固有番号などの情報を記録・送信します。リーダーは電波を受信することで、ICタグの情報を読み取ります。この際、リーダーとICタグの物理的な接触は不要です。

小型・軽量で安価なICタグは、セルフレジでの商品識別など、自動読み取りシステムに広く活用されています。生産履歴や流通経路の追跡にも役立ち、サプライチェーンの効率化に貢献しています。

しかし、ICタグはプライバシー侵害の懸念も抱えています。欧米では、消費者の購買行動追跡に使われる可能性から「スパイチップ」と呼ばれ、不買運動が起こった例もあります。消費者のプライバシー保護は、ICタグ普及における重要な課題です。

日本におけるプライバシー保護

日本では、総務省と経済産業省が「電子タグに関するプライバシー保護ガイドライン」を策定し、プライバシー保護対策を推進しています。このガイドラインでは、ICタグの使用にあたって、以下の点に配慮するよう求めています。

タグ装着の明示
消費者の読み取り拒否権の確保
個人情報の収集・利用制限
情報管理体制の確立
* 消費者への情報提供

消費者は、アルミ箔で覆う、情報を消去する、タグを取り外すなど、タグの読み取りを拒否する手段を選択できます。

ICタグの歴史と技術

日本のICタグの歴史は比較的浅く、本格的な普及は1990年代後半からです。初期は125kHz帯や134kHz帯が使用されていましたが、その後、非接触通信距離の長い13.56MHz帯が主流となり、ISO15693として国際標準化されました。現在では、2.45GHz帯なども使用されていますが、電波法規制や国際的な標準化の課題が残されています。

ICタグと万引き防止タグ

書店やレンタルビデオ店などで見かける万引き防止タグは、ICタグと似た見た目ですが、仕組みは異なります。万引き防止タグは、シンプルなコイルとコンデンサで構成され、電波の反射によって存在を検知します。中には、1ビットの情報しか保持しない単純なタグもあり、これはICタグとは区別されます。

国際標準規格とEPCコード

ICタグの国際標準規格としては、ISO/IEC 14443|ISO_IEC 14443（近接型）とISO/IEC 15693（近傍型）があります。どちらも13.56MHz帯を使用し、非接触型ICカードやRFIDに適用されます。

EPCコードは、国際標準規格ではありませんが、物流業界で広く使用されている識別コードです。96ビットのコードで、管理団体、品名、個別のシリアル番号などを含んでおり、膨大な数の物品を一意に識別できます。

ICタグの構成と技術

ICタグシステムは、ICタグとリーダー機から構成されます。ICタグはアンテナ、ICチップ、被覆からなり、リーダー機はアンテナ、チューナー、リーダーIC、マイクロコンピュータ部、電源部などから構成されます。リーダー機には、ICタグの情報書き換え機能（ライター機能）を持つものもあります。

ICタグのアンテナには、エッチング方式が主流です。ICチップには、マイクロコンピュータ、EEPROM、RAMなどが搭載され、低消費電力設計が重要です。アンテナとICチップは、インターポーザーやFCPと呼ばれる基板で接続されます。接続方法には、ACF（異方性導電膜）や超音波融着などがあります。

複数のICタグが同時に応答することで電波信号が衝突する「コリジョン」という現象が発生する可能性があります。これを回避するため、電波帯をチャンネル分割したり、リーダー側で衝突を検知・処理する仕組みが用いられています。

まとめ

ICタグは、様々な分野で活用されている便利な技術ですが、プライバシー保護の課題も抱えています。今後、技術の発展とともに、これらの課題への対応がますます重要になるでしょう。

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