ID (ASKAの曲)

ID (ASKAのシングル)

ASKAのソロキャリアにおいて、通算5枚目となるシングルとして発表された「ID」は、1997年2月5日に東芝EMIから発売されました。自身のソロ活動における重要な作品の一つとして位置づけられています。

タイトルの意味

本作のタイトル「ID」は、「Identification」（アイデンティフィケーション）の略です。これは、個人や存在を識別することを意味し、転じて自己同一性や「自分は何者であるか」といった内面的な探求のテーマを示唆しています。シングルのジャケットには、タイトルのロゴと共に「identification」の文字が記され、そのテーマ性が強調されています。

楽曲解説

シングルには、表題曲「ID」、カップリング曲「風の引力」、そして「ID」のインストゥルメンタルバージョンが収録されています。

ID

表題曲「ID」は、力強くメッセージ性の高い楽曲であり、自己の存在意義や内面への問いかけをテーマとしています。この楽曲は、フジテレビ系の人気ドラマシリーズ『木曜の怪談ファイナル』最終章「タイムキーパーズ」のテーマソングとして広く知られることとなりました。さらに、ASKA自身が出演したNECのCMソングとしても使用され、テレビを通じて多くの人々にその存在が認知されました。

風の引力

カップリング曲の「風の引力」も、単なるB面曲にとどまらない重要なタイアップ曲です。この楽曲は、日本航空（JAL）のキャンペーン「JAL STORY '97」のイメージソングとして採用されました。爽やかで解放感のあるサウンドは、空の旅や新しい可能性を感じさせるようなイメージと合致し、多くの人々に親しまれました。

ID (Instrumental)

表題曲「ID」のカラオケバージョンとして収録されており、楽曲の構成やアレンジを純粋に楽しむことができます。

プロモーションと撮影エピソード

「ID」シングルのプロモーション活動において特に印象深いのは、Music Videoとジャケット写真の撮影がベトナムで行われたことです。これらの撮影は、同時期に制作されていたオリジナルアルバム『ONE』のジャケット撮影も兼ねて実施されました。

撮影の主な舞台となったのは、ベトナム南部のベンチェー市であり、一部のシーンはホーチミン市でも撮影されました。「アジアの雑踏の中で『自分は何者なのか』を問いかける」というコンセプトのもと、異国の喧騒の中で自己を見つめる世界観が映像として表現されました。

撮影現場では、ユニークな出来事がありました。撮影を見ようと集まった多くの野次馬たちが、ASKAを香港の人気アクションスター、ジャッキー・チェンと間違えたのです。ASKAはこの状況を逆手に取り、敢えてジャッキー・チェンのような振る舞いをすることでその場を和ませ、撮影をスムーズに進める一助としたと語っています。

このエピソードは、当時ASKAが出演した『ミュージックステーション』や『HEY!HEY!HEY! MUSIC CHAMP』といったテレビの音楽番組で披露され、広く知られることとなりました。

収録アルバム

本シングルに収録された楽曲は、その後のアルバムにも収められています。

『ONE』 (1997年): 「ID」「風の引力」収録。
『ASKA the BEST Selection 1988-1998』 (1998年): 「ID」収録。
* 『Made in ASKA』 (2013年): 「ID」収録。

まとめ

「ID」シングルは、自己探求という普遍的なテーマを扱いながら、当時のドラマやCM、キャンペーンといった有力なメディアタイアップによって広く浸透した、ASKAのソロキャリアにおける重要な作品です。ベトナムでの印象的な撮影エピソードも含め、多角的な魅力を持つシングルと言えるでしょう。

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