IEC 60906-1

IEC 60906-1：交流電源プラグの国際規格

IEC 60906-1は、家庭用や類似用途向けの交流電源プラグとコンセントの形状に関する国際規格です。[1986年]]に[[国際電気標準会議]で制定されました。最大250V、16Aまでの電流に対応する設計で、感電保護クラスIの3端子タイプと、感電保護クラスIIの2端子タイプが存在します。

現在、この規格を正式に採用している国はブラジルのみです。ブラジルでは、2002年にIEC 60906-1に準拠したNBR 14136:2002規格を制定し、2010年1月1日よりこの規格に適合しない電気製品の輸入・販売が禁止されました。それ以前は、ブラジル国内では電圧やコンセントの形状が統一されておらず、日米型や欧州型のプラグが混在する状況でした。しかし、NBR 14136:2002規格の導入により、プラグ形状の統一化が図られました。ただし、実際には旧規格のプラグも依然として使用されているケースが見られます。

IEC 60906-1の特徴

IEC 60906-1規格のプラグは、端子の断面が円形で、電極端子の間隔が19mmです。電極端子の根元は絶縁加工され、先端のみが導電性を持つ構造になっています。根元の直径は4.5mm、先端の直径は6mmです。大きさは、欧州の3端子プラグよりもやや小さく、Europlug（2端子2.5A）とほぼ同等の大きさです。

コンセントには、プラグの誤挿入を防ぐため、周囲に深さ10mmの窪みまたはガイドが設けられています。また、アース端子が電極端子よりも先に接触する設計となっており、安全性を高めています。さらに、子供のいたずら防止のため、ソケットの孔には閉じ蓋が付けられています。

IEC 60906-1は、欧州のSchukoなどに見られるプラグと形状が似ていますが、互換性はありません。IEC 60906-1規格では、安全上の理由から、他の規格との互換性を明確に否定しています。

他の規格との比較

IEC 60906-1は、端子間隔や直径がSchukoやBS 1363などの規格とほぼ同じですが、いくつかの重要な違いがあります。例えば、BS 1363と比較すると、IEC 60906-1はEuroplugとの互換性がありません（変換は可能です）、差込ミスに対する配慮が少なく、サイズが大きく、最大電流値も13Aと小さくなっています。また、BS 1363は端子全体に導電性があるのに対し、IEC 60906-1は根元が絶縁されているため、安全性が向上しています。

しかし、IEC 60906-1は個々のプラグにヒューズを組み込む必要がないため、イギリスの電気配線規則に違反します。また、プラグを差し込んだ状態の大きさがBS 1363よりも大きいため、設置場所によっては不便な場合があります。

Schukoとの違いは、Schukoの方が端子間隔の許容誤差が大きく、BS 1363との互換品を作ることができず、サイズも大きくなっています。さらに、Schukoの多くはアース端子を持っていません。スイス規格（SN 441011）とも類似していますが、アース端子の位置や端子の太さなどが異なります。

クラス0プラグとソケット

IEC 60906-1規格では、ソケット形状が円形の国にも対応するため、感電保護クラス0の規格も設けられています。しかし、安全性の面では六角形タイプのクラスIやクラスIIよりも劣ります。クラスIIプラグはクラス0ソケットに挿入可能ですが、クラスIプラグはアース端子があるため挿入できません。ただし、ダミーの穴を開けたクラス0ソケットも存在します。安全上の理由から、クラス0プラグはクラスIやIIソケットには挿入できないようになっています。IECは、安全上の配慮からクラス0の使用を段階的に制限しており、新たな規格として円形ソケットが採用される可能性は低いとされています。

まとめ

IEC 60906-1は、安全性を考慮した設計がなされた交流電源プラグ規格ですが、他の規格との互換性がない点や、クラス0規格の存在など、いくつかの課題も抱えています。ブラジルでの採用事例は、規格の統一化に成功した一方で、旧規格のプラグも併用されている現状から、完全な移行には課題が残されていると言えるでしょう。

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