IEEE 802.1Q

IEEE 802.1Qとは

IEEE 802.1Qは、主にMACブリッジ（ネットワークスイッチ）の動作を規定するIEEEの標準規格であり、IEEE 802.1標準化委員会のタスクグループによって策定されています。この規格は、当初はタグVLANの仕様として広く知られていましたが、その後の改訂を経て、MACブリッジを基盤とした様々な機能を含む総合的な規格へと発展しました。

歴史と発展

IEEE 802.1Qは、1998年の初版リリース以来、多くの改訂を重ねてきました。当初は「Virtual Bridged Local Area Networks」という名称で、タグVLANの仕様を規定していました。この仕様は「Dot-1Q VLAN」とも呼ばれ、VLANの基礎として広く利用されました。

その後、2014年の改訂では「Bridges and Bridged Networks」と名称が変更され、IEEE 802.1Dで規定されていたMACブリッジの基本動作や管理機能、スパニングツリープロトコルなども包括的に取り込まれました。これにより、IEEE 802.1Qは単なるVLANの規格から、より広範なネットワーク技術をカバーする規格へと進化しました。

主な機能と特徴

IEEE 802.1Qは、以下の様な機能や特徴を持っています。

タグVLAN: ネットワークを論理的に分割し、ブロードキャストドメインを分離する機能です。これにより、ネットワークのセキュリティや管理効率が向上します。
MSTP (Multiple Spanning Tree Protocol): VLANごとにスパニングツリーを構成できるプロトコルです。これにより、ネットワークの冗長性を確保しつつ、トラフィックを効率的に分散させることができます。
VLANの二重タグ: VLANタグを二重に付与することで、より複雑なネットワーク構成を可能にする機能です。主にサービスプロバイダなどで利用されます。
MRP/MVRP (Multiple Registration Protocol/Multiple VLAN Registration Protocol): VLAN情報を動的に登録・削除するプロトコルです。これにより、ネットワーク管理者の負担を軽減し、VLAN設定のミスを防ぐことができます。
PFC (Priority-based Flow Control): 優先度に基づいてフロー制御を行う機能です。これにより、高優先度のトラフィックを優先的に転送することができます。
SPB (Shortest Path Bridging): 複数経路での接続や経路負荷分散を可能にする機能です。これにより、ネットワークの可用性や帯域利用率が向上します。
MACブリッジの基本動作: フレームの送受信、転送処理、アドレス学習、フィルタリングなど、MACブリッジの基本的な動作を規定しています。
MACブリッジ管理機能: MACアドレスエントリ、転送統計、フィルタリングエントリ、STP状態など、MACブリッジの管理に必要な機能を規定しています。
スパニングツリープロトコル: RSTP（Rapid Spanning Tree Protocol）の仕様やBPDU（Bridge Protocol Data Unit）の書式など、スパニングツリープロトコルに関する規定をしています。

改訂履歴

IEEE 802.1Qは、以下の通り、多数の改訂版が存在します。

IEEE 802.1Q-1998: 初版。「Virtual Bridged Local Area Networks」としてリリースされ、タグVLANの仕様が規定されました。
IEEE 802.1Q-2003: MSTPの仕様が追加されました。
IEEE 802.1Q-2005: VLANの二重タグの仕様が追加されました。
IEEE 802.1Q-2011: MRP/MVRPの仕様、PFCの仕様が追加されました。
IEEE 802.1Q-2014: 「Bridges and Bridged Networks」に改称され、SPBの仕様、IEEE 802.1Dの内容が取り込まれました。
IEEE 802.1Q-2018: その後の機能拡張や修正が行われました。
IEEE 802.1Q-2022: 最新版として、更なる機能拡張や修正が行われました。

関連事項

VLAN (Virtual Local Area Network): IEEE 802.1Qで規定される主要な機能の一つで、ネットワークを論理的に分割する技術です。
IEEE 802.1: IEEE 802シリーズのネットワーク関連規格を策定する委員会。
* IEEE 802.1D: MACブリッジの基本動作や管理機能、スパニングツリープロトコルなどを規定していた規格で、2014年版以降はIEEE 802.1Qに統合されました。

IEEE 802.1Qは、ネットワーク技術の発展とともに、その内容を常に進化させてきました。今後も、新たな技術やニーズに対応した改訂が行われることが予想されます。

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