ISO/IEC 15504

ISO/IEC 15504 (SPICE) の概要

ISO/IEC 15504、一般にSPICE（Software Process Improvement and Capability dEtermination）として知られるこの国際規格は、ソフトウェア開発プロセスをはじめとした様々な組織活動のプロセス評価のための枠組みを提供します。特定のプロセスモデルに限定されず、組織の能力とプロセス定義構造に基づいたアセスメントを可能にする柔軟なフレームワークです。

SPICEは、完成された方法論を提示するのではなく、様々な方法論に共通する要素を定義することに重点を置いています。そのため、組織は独自の評価方法や既存のモデルをSPICEの枠組みの中で活用できます。例えば、Part 5ではソフトウェアライフサイクルプロセス(ISO/IEC 12207|ISO_IEC 12207)をベースとした実践的な指標（プラクティス）を示し、Part 6ではシステムライフサイクルプロセス(ISO/IEC 15288)に対応するモデルを提供しています。これらのモデルに記載されている内容は、過去の成功事例に基づいたベストプラクティスであり、絶対的な実施事項ではありません。

SPICEでは、評価者（アセッサ）が対象組織のプロセスを評価する際に、事前に把握している情報、面談結果、証拠などを分類・分析し、組織の能力レベルを判定します。評価方法は、外部からの調達目的の評価と、組織内部の改善目的の評価の2種類があります。

SPICE 標準の構成

SPICEは、技術レポート(TR)から国際規格(IS)へと進化しました。現在のISは5部構成で、Part 1ではSPICEの概念と枠組みの概要を説明しています。規格策定においては、文化的な差異を考慮するため、英語を母語とする者とそうでない者を複数エディタとして配置するなど、国際的な協調体制がとられました。

参照モデルとプロセス分類

初期のSPICE(TR)には「参照モデル」が含まれていましたが、現在のISでは、ISO/IEC 12207|ISO_IEC 12207やISO/IEC 15288など、様々なプロセスモデルを「参照モデル」として利用できるようになっています。Part 5では、プロセスを「顧客-供給者」「技術」「支援」「管理」「組織」の5種類に分類し、それぞれのプロセスについて能力レベルを評価します。

能力レベルとプロセス属性

各プロセスの能力は、9つのプロセス属性（プロセス実施、プロセス管理、作業成果物管理、プロセス定義、プロセス展開、プロセス測定、プロセス制御、プロセス革新、プロセス最適化）を用いて測定されます。各属性は「達成できていない」「部分的達成」「ほとんど達成」「完全達成」の4段階で評価され、それぞれに百分率で表現された達成度が定義されています。

診断プロセス

SPICEは、診断プロセスのモデル、診断に利用できるツール、診断を成功させるための要因などを含んでいます。診断モデルは、実際の診断に使用する詳細なモデルで、参照モデルとの対応付けが作成されます。

診断員（アセッサ）に必要なスキル

SPICEによる診断を行うアセッサには、優れたコミュニケーション能力、関連分野における適切な教育・訓練・経験、そして評価対象分野に関する専門知識が求められます。

SPICE の利用目的

SPICEは、主に以下の2つの目的に使用されます。

1. プロセス改善: 組織のプロセスを改善するために、現状を正しく把握し、改善活動を実施した後、再度評価することで継続的な改善を促します。SPICEの枠組みは、目標設定、プログラム策定に役立ちます。
2. 能力判定: ソフトウェア開発などのアウトソーシングにおいて、サプライヤーの能力を評価するために利用されます。組織は、必要に応じてサプライヤーの能力目標を設定し、SPICEに基づいた評価を実施します。Practical Process Profilesなどの手法を活用することで、リスクを考慮した効果的な能力判定が可能になります。

SPICE の歴史と発展

SPICEは1993年にワーキンググループが結成され、当初はソフトウェア開発工程に焦点を当てていましたが、その後、プロジェクト管理、構成管理、品質保証など、ソフトウェアビジネス関連の幅広いプロセスを扱うよう拡張しました。初期の参照モデルは削除され、現在はISO/IEC 12207|ISO_IEC 12207やISO/IEC 15288など、様々な参照モデルを使用できます。

CMMI との関係

SPICEと[能力成熟度モデル統合]は、共通点を持つ枠組みです。SPICEのエディタの中にはCMMIの作成者も参加しており、両者の考え方は共通しています。しかし、直接比較することに意味はなく、それぞれ独自の特性を持っています。SPICEはISO/IEC規格として利用でき、4000以上の評価実績があり、自動車産業、宇宙産業などで広く活用されています。また、Automotive SPICEなど、分野固有のモデルも派生しています。

まとめ

SPICEは、組織のプロセスを評価・改善し、サプライヤーの能力を判定するための強力なツールです。柔軟性と汎用性を持ち、様々な業界や組織で活用されています。

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