Il-12 (航空機)

イリューシン12（Il-12）

イリューシン12（ロシア語: Ил-12）は、ソビエト連邦のイリューシン設計局によって開発されたレシプロ双発旅客機です。北大西洋条約機構（NATO）のコードネーム「コーチ」にも登場するこの航空機は、第二次世界大戦後、主にソ連で運用されました。イリューシン12は、当時の主力機であったダグラス DC-3及びそのソ連版であるLi-2の近代化モデルとしての役割を担い、1947年に初飛行を果たしました。

この機体は、単なる旅客輸送だけでなく、貨物輸送にも対応できる汎用性があるため、運用される国や航空会社も多種多様でした。具体的には、ソ連国内だけでなく、ポーランド航空（LOT）やチェコ航空（CSA）においても使用されていました。

機体の概要

イリューシン12の設計は、航続距離や搭載能力の向上を目指して行われました。全長21.30m、全幅31.70m、高さ8.10mという大きさは、当時の旅客機としては十分に大きなものでした。翼面積は100m²に達しており、これにより安定した飛行性能が実現されています。

機体の重さは約9,000kg、最大離陸重量は約17,000kgで、重い荷物や多人数の乗客を運ぶ能力を持ています。また、最大速度375 km/h、巡航速度320 km/hという性能も、他の同時代の旅客機と比べて優れています。

エンジンとパフォーマンス

イリューシン12は、ASh-82FNVという複列14気筒の空冷星型エンジンを2基搭載しており、それぞれが1,850馬力を発揮します。このエンジンにより、高速での定期便運航が可能となり、スムーズな操縦が実現されています。

乗客数は18名から32名を収容でき、4名から5名の操縦乗員によって運航されます。この搭載人数の幅の広さは、運航する航空会社の方針に応じたフレキシビリティを提供していました。

歴史的意義

イリューシン12は、その開発背景からも分かるように、戦後のソ連の航空業界にとって重要な一歩でした。国際的な民間航空機市場において、独自の技術力を持つソビエト製ターボプロップ旅客機として、日本や東欧諸国の国際競争に臨むこととなりました。

その後、イリューシン12はさらに大型化したイリューシン14が開発されるにあたって、さまざまな改善点が洗い出され、次世代機の参考となりました。イリューシン12はその設計と運用形態を通じて、当時の航空業界に大きな影響を与え続けた存在です。

もう一度検索