Intel Xe

Intel Xeアーキテクチャ：Intelの新たなGPU戦略

Intel Xeは、インテルが開発した汎用GPU（GPGPU）およびディスクリートGPU（dGPU）アーキテクチャです。1998年のIntel 740以来となる、インテルによる単体GPUとして注目を集めています。データセンター、ハイパフォーマンスコンピューティング、そしてゲーミングPCまで、幅広い用途をターゲットとした設計となっており、Intel Iris XeやIntel Arcといった製品ブランドを通じて展開されています。

Xeアーキテクチャの多様性

Intel Xeアーキテクチャは、消費電力や用途に合わせて複数のマイクロアーキテクチャに分類されます。

Xe-LP: 低消費電力版。第11世代Intel Coreプロセッサーの内蔵グラフィックス(Intel Iris Graphics)や、ノートPC向けGPU(Intel Iris Xe MAX)などに採用されています。サーバー向けGPUにも応用されています。
Xe-HPG: ハイパフォーマンスゲーミング向け。レイトレーシング対応など、グラフィックス性能に特化しており、Intel Arc Graphicsブランドで展開されています。
Xe-HP: データセンター向けハイパフォーマンス版。高いFP64パフォーマンスとマルチタイル・スケーラビリティが特徴です。
Xe-HPC: ハイパフォーマンスコンピューティング向け。スーパーコンピュータ「オーロラ」などに搭載されているPonte Vecchio GPUに採用されています。

これらのマイクロアーキテクチャは、共通の命令セットアーキテクチャをベースとしながらも、それぞれ異なる特性を持つため、様々な用途に対応できます。新しい命令セットアーキテクチャは、従来のIntel GPUと大きく異なっており、ほぼ全ての命令エンコーディングが変更されています。サンプラー・フィードバック、デュアル・キュー・サポート、DirectX 12ビュー・インスタンシング・ティア2、AV1 8ビットおよび10ビット固定機能ハードウェア・デコーディングなどの新機能が実装されています。

Intel Xeの開発の歴史

Intel Xeの開発は2018年に本格化しました。NVIDIAやAMDとの競争を意識し、経験豊富な人材の招聘や外部ファブの活用など、積極的な戦略がとられました。当初はデータセンター向けをターゲットとしていましたが、後にデスクトップPC向けにも展開されることになりました。

開発段階では「Arctic Sound」というコードネームが用いられていました。2019年にはXe DG1という最初のディスクリートGPUのプロトタイプがテストされ、2020年には開発者向けに公開されました。その後、Iris XeブランドでのノートPC向けGPUや、Intel Arcブランドでのゲーミング向けGPUとして製品化され、市場に投入されています。

Intel Xeは、Ponte Vecchioのような大規模なHPC/AI向けGPUにも採用されています。これは、IntelのEMIB(Embedded Multi-Die Interconnect Bridge)やFoverosなどの先進的なパッケージング技術と組み合わせることで、高い計算能力を実現しています。

Intel Xeを使用した製品

Intel Xeアーキテクチャは、様々な製品に採用されています。

統合グラフィックス:
第11世代Intel Coreプロセッサー以降

ディスクリートグラフィックス:
Intel Iris Xe MAX (DG1): ノートPC向けのエントリーレベルGPU。Tiger Lakeプロセッサーとの連携も可能です。
Intel Iris Xe Graphics デスクトップカード: デスクトップPC向け。低価格帯をターゲットとしています。
Intel Arc Graphics: ゲーミング向けの高性能GPU。AMD RadeonやNVIDIA GeForceと競合する製品です。
* Ponte Vecchio: HPC/AI向けGPU。スーパーコンピュータなどに搭載されています。

今後の展望

Intelは、Xeアーキテクチャの後継となるXe2アーキテクチャへの移行を進めていると報じられています。今後も、様々な分野でIntel Xeアーキテクチャとその進化が期待されます。

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