Irāvatī

林原めぐみ8thアルバム『Irāvatī』：記憶に残る一作

1997年、歌姫・林原めぐみから8枚目のオリジナルアルバム『Irāvatī』がリリースされました。前作からわずか1年という短いスパンでのリリースは、その充実した制作活動の証と言えるでしょう。

本作『Irāvatī』は、シングル曲やリメイク曲を収録しながらも、新規楽曲も加えられた全13曲という構成。そのため、オリジナルアルバムとベストアルバムの両方の要素を兼ね備えた、独特の仕上がりとなっています。

特に注目すべきは、それまでアルバム未収録だった「Just be conscious」、「Successful Mission」、そして先行シングル「Reflection」といった楽曲の収録です。これらの楽曲の存在が、アルバム全体の完成度を高めています。ただし、「don't be discouraged」とそのカップリング曲「Breeze」は、残念ながら収録されていません。

アルバムタイトルである『Irāvatī』はサンスクリット語由来で、「元気回復」「リフレッシュメント」「癒し」といった意味を持ちます。しかし、同時に「酒を振る舞う」「食べきれない食べ物」といった、多様な解釈も可能な言葉でもあります。林原めぐみ自身も、この言葉の多義性に惹かれ、アルバムタイトルとして採用したと語っています。まさに、アルバムの多様な楽曲構成と見事に調和していると言えるでしょう。

初回限定盤には、鹿児島県屋久島で撮影された写真集が同梱されました。林原めぐみ本人は、屋久島に「呼ばれた」と感じ、この地での撮影を決めたとコメントしています。写真集からも、自然豊かな屋久島の美しい風景と、林原めぐみの凛とした魅力が感じられます。

2005年には、初回限定盤仕様（紙BOX仕様）での限定生産による復刻盤もリリースされました。これは、多くのファンにとって嬉しいサプライズだったと言えるでしょう。

当初、岡崎律子氏提供の楽曲「雨の子犬」も収録予定でしたが、アルバム全体のコンセプトとの兼ね合いでお蔵入りとなり、後に2010年発売のアルバム『CHOICE』にて収録されることとなります。

記録的セールスと高い評価

『Irāvatī』は、商業的な成功も収めました。初動売上、通算売上ともに、声優によるアルバムとして歴代最高記録を樹立。オリコンチャートでは2週連続TOP10入りを果たし（初週5位、2週目8位）、林原めぐみのシングル・アルバムを通して唯一、年間TOP100（79位）にもランクインするという快挙を達成しています。

林原めぐみ自身も、自著の中で40万枚の売上を公表しており、その人気とアルバムのクオリティの高さを証明しています。1997年8月にはゴールドディスクにも認定され(当時の認定基準は出荷枚数20万枚以上)、そのセールスの成功ぶりは、数字としても裏付けられています。

『Irāvatī』は、単なる音楽作品という枠を超え、林原めぐみというアーティストの集大成であり、日本の音楽史においても重要な位置を占める作品となりました。その魅力は、今聴いても色褪せることなく、多くのリスナーを魅了し続けることでしょう。

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