It WAS love

「it WAS love」 - チューリップの第26シングル

「it WAS love」は、1984年6月30日に発売されたチューリップの通算26枚目のシングルです。このシングルは、バンドが1972年のデビュー以来、12年間在籍していた東芝EMI（EXPRESS）から、プロデューサーの新田和長が設立したファンハウスに移籍してから初めての作品となります。この時期、チューリップは徐々にバンドとしてのまとまりを失いかけており、財津和夫は「ヒットしたら儲けもの」といった心理でこの曲に取り組んでいたと言います。

曲のタイトル「WAS」の文字が他よりも大文字になっているのは、何か特別な変化を演出しようとした結果であると後のインタビューで語っています。このような試みにもかかわらず、バンド内での一体感の喪失や音楽スタイルの変化は否めない時期でした。このシングルは、チューリップが新たな方向性を模索していた過渡期の象徴とも言えるでしょう。

シングルのジャケットには、ライブイベント「チューリップ・ランド・イン・芦ノ湖 8.11パゴダ」に関する情報も掲載されており、このイベントはシングルのプロモーションの一環として重要な位置を占めていました。このライブ演奏は、実にその一回のみとなり、後のライブ盤『8.11 PAGODA|8.11_PAGODA』にも収録されていません。さらに、A面とB面の楽曲はいずれもアルバムに収録されておらず、CD化されることが極めて少ないことも特徴です。

特にB面の曲については、2007年に発表された限定版ボックスセット『The Complete Single Box これこそが「TULIP ポップ」だ!』や、非公式のベストアルバム『チューリップ CD&DVD BEST』を除いて、他にCDとして入手する手段が存在しないため、非常に貴重な音源となっています。A面に関しては、記念アルバム『TULIP 40〜すべてのシングル40曲 デビュー40周年を記念して〜』に収録されていることから、今でも気軽に手に入れることができます。

「it WAS love」はチューリップのオリジナル・シングルとしては最後の作品であり、その後のシングルはすべてアルバムからのカットやリカット曲となってしまいます。この曲以降、1989年の解散までの期間は、リメイクを除けば新しいオリジナルシングルは生まれませんでした。

収録曲

全曲作詞・作曲：財津和夫、編曲：チューリップ

• - it WAS love

A面の「it WAS love」は、当年の秋からのツアー「Out Of Our Time」のオープニングを飾っており、その後は演奏されることはありませんでした。このように、このシングルはチューリップにとっての重要な作品であると同時に、バンドの歴史的な転換点を示す楽曲でもあるのです。

「it WAS love」がリリースされた1984年は、音楽シーン全体にとっても多くの変化があった年でした。チューリップが新たなステージに挑戦する中で、果たしてどのような影響をもたらすのか、ファンにとっても期待と不安が入り交じった時期だったことでしょう。

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