J&S/さすらいの逃亡者

1972年に製作された映画『J&S/さすらいの逃亡者』は、セルジオ・コルブッチが監督を務めたマカロニ・ウェスタンの一本です。原題は『La banda J. & S. - Cronaca criminale del Far West』といい、日本国内ではテレビ放送時に『さすらいの逃亡者・火を吹く皆殺しのマシンガン』という副題が加えられることもありました。

物語の中心となるのは、悪名高いアウトローとして西部にその名を轟かせているジェド・トリガートです。彼はある日、立ち寄った町で思わぬ罠に陥ります。その町には、かつてジェドが原因で刑務所長の職を追われた過去を持つフランシスカスという保安官がいました。フランシスカスはジェドへの激しい復讐心を胸に、執拗な追跡を続けていたのです。ジェドは絶体絶命の危機に瀕しますが、その窮地を一人の若い女性に救われます。

彼女の名はサニー。墓掘り人の姪であり、奔放な性格の持ち主です。サニーはジェドという危険な存在に強い憧れを抱いていました。ジェドは彼女を「犬のように」と突き放すような言葉で扱いながらも、彼女が自分についてくることを許します。サニーはジェドの傍らを離れず、時には彼の荒々しい振る舞いや暴力的な扱いに耐えながらも、ひたすら彼に付き従い続けます。

過酷な旅を共にするうちに、二人の間には奇妙な絆が生まれ、やがてそれは深い愛情へと変わっていきます。そしてついに、ジェドとサニーは結ばれ、夫婦となります。彼らは共に西部を旅するアウトローとして、様々な事件を起こしながら無法者の道を突き進んでいくのでした。

本作は、追われる身であるアウトローと、彼に心酔する女性の歪んだ愛の形を中心に描かれています。復讐を誓う保安官の存在が物語に緊迫感を与えつつも、主軸となるのはジェドとサニーの関係性の変化です。初期の支配的なジェドと従順なサニーという関係から、互いを求め合うパートナーへと変貌していく様が描かれます。マカロニ・ウェスタン特有の乾いた空気感の中で展開される、二人の破滅的でありながらも純粋な愛の物語は、観る者に強い印象を残します。西部開拓時代の過酷な環境を背景に、社会規範から外れた二人の生き様と、彼らを追う法執行官の執念が交錯するドラマは、マカロニ・ウェスタンの魅力を十分に感じさせる作品と言えるでしょう。ジェドとサニーが共に歩む道は決して平穏なものではありませんが、彼らが選んだ生き方、そしてその中で育まれた唯一無二の絆が、この映画の核となっています。

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