JATユーゴスラビア航空機爆破事件

JATユーゴスラビア航空機爆破事件

1972年1月26日に発生したJATユーゴスラビア航空機爆破事件は、ダグラスDC-9-30型旅客機が飛行中に爆破されたテロ事件です。この事件は、クロアチア民族主義者によって仕掛けられた爆発物が原因で発生しました。

事件の概要

事件が発生したJATユーゴスラビア航空367便は、デンマークのコペンハーゲンを出発し、ザグレブを経由してベオグラードへ向かう途中でした。1972年1月26日午後5時頃、チェコスロバキア（現在のチェコ共和国）のSrbska Kamenice上空10,160メートルを飛行中に、機内に仕掛けられた爆弾が爆発し、機体は空中分解しました。この爆弾は、ユーゴスラビア当局によるクロアチア民族主義者指導者らの国外追放に抗議するグループによって仕掛けられたと考えられています。

空中分解

爆発により、機体は高度10,160メートルで空中分解するという、非常に深刻な状況に陥りました。乗員6名と乗客22名の合計28名が搭乗していましたが、この高度からの落下は生存を絶望視させるものでした。

奇跡の生存者

しかし、この絶望的な状況の中で、一人の客室乗務員が奇跡的に生還しました。彼女の名前はヴェスナ・ヴロヴィッチ。当時22歳でした。彼女は墜落の衝撃で全身に複雑骨折を負いましたが、奇跡的に命を取り留め、救助されました。

彼女が生存できた理由は、機体が空中分解した際、彼女がいた機体後部が、木の葉が舞い落ちるように落下し、山の斜面にある木々に引っかかりながら着地したためと考えられています。さらに、墜落から45分後には救助隊に発見され、迅速な輸血措置により出血多量による死亡を免れました。この奇跡的な生還は、パラシュートなしで最も高い高度から落下して生還した記録として、ギネスブックにも認定されています。

その後

ヴェスナ・ヴロヴィッチは、一時的に下半身麻痺となるなど、長期の入院生活を余儀なくされましたが、1年4ヶ月のリハビリを経て社会復帰を果たしました。その後も航空会社で事務職として勤務しましたが、1990年に当時のユーゴスラビア大統領であったスロボダン・ミロシェヴィッチを批判したことで解雇されました。2016年、彼女はベオグラードのアパートで心臓病により66歳で亡くなりました。

この事件は、テロの恐ろしさと同時に、人間の生命力の強さ、そして奇跡の存在を示唆する出来事として、今もなお語り継がれています。

関連項目

* 航空事故

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