JOY (山下達郎のアルバム)

山下達郎 ライブアルバム『JOY –TATSURO YAMASHITA LIVE–』：完成度の高いライブパフォーマンスを凝縮

1989年11月1日にリリースされた山下達郎のライブアルバム『JOY –TATSURO YAMASHITA LIVE–』は、彼の音楽キャリアにおいて重要な位置を占める作品です。このアルバムは、単なるライブ音源の集積ではなく、山下達郎の音楽性とライブパフォーマンスに対する深い考察が凝縮された、完成度の高い作品と言えるでしょう。

ライブアルバム制作への山下達郎の考え方

当時、山下達郎は洋楽のライブアルバムをあまり好んで聴かなかったと語っています。その理由として、ステージを実際に体験したことがないリスナーには、ライブの臨場感が伝わりにくいという点を挙げています。しかし、自身のライブ活動、特にフェイドアウト後の演奏にこだわる彼のスタイルを考えると、ライブアルバムの制作は必然的な選択だったと言えるでしょう。山下達郎は、ライブにおける「レコードとは違ったファクター」の重要性を指摘し、ライブならではのエネルギーや緊張感が、レコーディングでは得られない魅力を生み出すと述べています。

レコーディングとの違い、そしてライブの価値

当初、ライブをラフなものと捉えていた山下達郎は、ライブ音源のレコード化に抵抗を感じていたようです。しかし、実際に録音されたテープを聴いて、そのクオリティの高さに驚嘆しました。結果的に、ほとんど手直しをすることなくアルバムが完成したとのことです。この経験を通して、山下達郎はライブに対する考え方を改めました。それまでレコーディングをクリエイティブな作業の最高峰と考えていましたが、ライブの一発勝負の迫力が、レコーディングでは得られない魅力を持っていることを認識したのです。特に、長年に渡り同じメンバーと演奏してきたことで生まれる安定感、シックス・リズムによる力強いグルーヴは、レコーディングを超える魅力を備えていたと彼は語っています。この経験は、彼自身の音楽制作においても大きな転換点となったと言えるでしょう。

80年代の音楽的変遷と一貫性

『JOY –TATSURO YAMASHITA LIVE–』には、80年代10年間のライブパフォーマンスが収録されています。しかし、アルバム全体を通して、時代による音楽的な変化はほとんど感じられません。これは、長年に渡り同じメンバーと活動を続け、アレンジを一曲につき一つしか作らないという山下達郎のこだわりによるものです。安定したメンバー、そして一貫したアレンジは、彼の音楽スタイルの強さと、音楽的アイデンティティの明確さを示しています。

アルバムのアートワークと収録曲

アルバムジャケットのアートワークは、アンドレ・ミリポルスキーによるイラストが使用されています。これは、彼の次のアルバム『ARTISAN』でも使用されたイラストレーターです。アルバムには、山下達郎自身の楽曲の他、竹内まりや、The Delphonics、The Beach Boys、そして自身の提供曲である鈴木雅之の楽曲のカヴァーも収録されています。これら多様な楽曲によって、山下達郎の音楽的幅広さが示されています。

アナログ盤とCDの違い

『JOY –TATSURO YAMASHITA LIVE–』は、完全限定生産の3枚組アナログ盤と2枚組CDでリリースされました。収録時間の都合上、アナログ盤とCDでは曲順が一部変更されています。また、アナログ盤はCDとは異なるミックスが採用されているという点も特徴の一つです。

まとめ

『JOY –TATSURO YAMASHITA LIVE–』は、単なるライブアルバムの枠を超え、山下達郎の音楽家としての姿勢、ライブパフォーマンスに対する考え方が凝縮された作品です。彼の音楽性、そしてライブの持つ力強さを改めて感じさせてくれる、重要な一枚と言えるでしょう。

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