JPQR

JPQR

JPQRは、日本国内におけるQRコード決済のために策定された統一規格です。

概要

国内でキャッシュレス決済、特にQRコード決済サービスが多数登場し、各事業者が独自の仕様で展開したため、店舗側は複数のQRコードを用意する必要が生じるなど、利用者・店舗双方にとって不便な状況が発生しました。このような状況を改善し、キャッシュレス社会の実現を促進するため、日本国政府（総務省・経済産業省）の主導により、決済用の統一QRコード規格としてJPQRの導入が進められました。

この統一コードに関する名称は2019年（令和元年）3月22日に、詳細な仕様は同年3月29日に、一般社団法人キャッシュレス推進協議会によって策定されています。

JPQRには、「利用者提示型（CPM: Consumer Presented Mode）」と「店舗掲示型（MPM: Merchant-Presented Mode）」の二つの方式があります。このうち、CPMにおいてバーコードを用いる形式については、2019年8月1日を目途にJPQRコードへの切り替えが図られました。一方、CPMのQRコード形式やMPM形式については、当時の時点では今後の対応が未定とされていました。

2019年8月1日の早朝からは、au PAY、メルペイ、楽天ペイ、ゆうちょPay、はまPay、YOKA!Pay、OKIPay、りそなウォレットといった一部の決済サービスがJPQRコードに対応し、サービスが開始されています。

導入の背景

2010年代後半にかけて、日本国内では様々な企業が次々と独自のキャッシュレス決済サービスを立ち上げました。特にQRコード決済の分野でその傾向が顕著でしたが、これらのサービス間には互換性がほとんどありませんでした。多くのサービスが並存する状況は、決済システムの非効率化、事業者間の過度な競争による決済手数料の高止まり、そして利用者および店舗運営における煩雑さといった問題を引き起こしました。

これらの問題点は、日本におけるキャッシュレス決済の普及を妨げる要因ともなっていました。そこで、こうした課題を解決し、国内でのキャッシュレス決済のさらなる浸透を図ることを目的として、特に乱立が著しかったQRコード決済の共通規格として、2019年に日本国政府の強い働きかけのもと、JPQRが提唱され導入に至りました。

サービス開始後の動向と課題

JPQRは共通規格として期待されましたが、2020年以降、その普及には様々な課題が見られるようになりました。JPQRに参画していた大手決済事業者の中には、例えばPayPayのように、JPQRを通じた利用契約よりも自社独自の個別契約を推奨・優遇する方針を採る動きも現れました。こうした各決済事業者の戦略の違いから、JPQRによる共通規格化という当初の理想は、実質的にその目的を達成できていない形骸化した状態にあるとの指摘も聞かれます。

加えて、一般への認知度も十分に高まっていないことに加え、各決済事業者の顧客囲い込み戦略とJPQRの共通化の理念との間には齟齬や思惑の相違が存在しました。こうした複合的な要因が影響し、2021年度末には日本全国で10万店舗への導入を目指して普及促進事業が進められたにも関わらず、サービス開始から約2年が経過した2021年9月時点でのJPQR導入店舗数は約1万2000店舗に留まりました。これは国内全小売店舗の約1.5パーセント程度に過ぎず、目標を大きく下回る結果となっています。

JPQRに対応する決済システムは複数存在しますが、共通規格としての普及は道半ばであり、今後の展開が注目されています。

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