JR貨物コキ73形貨車

JR貨物コキ73形貨車について

JR貨物コキ73形貨車は、日本貨物鉄道（JR貨物）が2016年度に製造した、各種海上コンテナ輸送用の貨車（コンテナ車）です。

開発の背景

従来、JR貨物ではISO規格の海上コンテナ輸送にコキ100系やコキ200形を使用していました。これらの貨車では、高さ8 ft 6 in（2,591 mm）の標準コンテナは東海道本線や山陽本線など多くの線区で輸送可能でしたが、国際海上コンテナで多用される高さ9 ft 6 in（2,896 mm）の背高（ハイキューブ）コンテナは、トンネルなどの建築限界に抵触するため、東北本線系統の東京貨物ターミナル - 盛岡貨物ターミナル間での輸送に限られていました。

そこで、JR貨物は、車両限界の小さい線区でも背高コンテナの輸送を可能にするため、小径車輪を使用し、車体中央部を低床化したコンテナ車を試作することになりました。これがコキ73形です。

構造

コキ73形は、背高海上コンテナを積載するために、積載部の床面高さをコキ100系の1,000mmより約300mm低い740mmに設定しました。これにより、背高コンテナの輸送が可能になりました。デッキの高さは従来車と同等ですが、コンテナ積載部が一段低くなっているのが特徴です。車体形状は、1996年に試作されたコキ72形に似ていますが、車体色は水色を採用しています。

荷重は48tおよび30.5tで、40ftコンテナ1個または20ftコンテナ2個を積載できます。台車は低床化のため小径車輪を使用しており、台車形式はFT17形です。

運用状況

コキ73-1は2016年1月に日本車輌製造で落成しました。JR貨物は当初、2021年までに東海道・山陽本線で背高海上コンテナ輸送を開始すると発表しましたが、2017年の労使交渉で、コキ73形の試運転結果が思わしくなかったことが示唆されました。

その後、各種試験と改良を経て、2021年9月から東北本線系統で営業運転を開始しました。東京貨物ターミナル - 宇都宮貨物ターミナル間では、4072・4073列車の機関車次位にコキ73形1両が連結されることがあります。2022年度には3両が増備され、総数は4両となりました。

課題と今後の展望

コキ73形は特殊な構造のため、車両価格やメンテナンスコストが高くなるという課題があります。そのため、今後の増備には公的支援が必要とされています。国土交通省の検討会では、JR貨物が「車両価格が高く、メンテナンスコストも高い」と述べており、普及には初期段階での公的支援が不可欠であることが示されています。

JR貨物の2023年度事業計画では、コキ73形の増備予定は入っていません。しかし、トラックドライバーの残業時間規制による2024年問題への対応として、政府とJR貨物は共同で、2023年度内に低床貨車を用いた背高コンテナ輸送の実証実験を行うことを決定しました。まずは首都圏と日本海側を結ぶ路線で試運転を行い、輸送の課題を検証する予定です。

コキ73形は、背高コンテナ輸送の可能性を広げる上で重要な役割を担っています。今後の動向が注目されます。

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