JWオートモーティヴ・エンジニアリング

JWオートモーティヴ・エンジニアリング：英国レーシング界の輝ける星

JWオートモーティヴ・エンジニアリング(JWA)は、英国で活躍した伝説的なレーシングカーコンストラクターであり、その名はスポーツカーレース史に深く刻まれています。1964年、フォード・モーターの英国子会社として設立されたフォード・アドヴァンスド・ヴィークルズ(FAV)を前身とし、1967年に独立を果たしました。

JWAの設立には、元DBアストンマーティン監督のジョン・ワイヤーと、フォード販売店経営とレースチーム運営を兼任していたジョン・ウィルメントという2人の実力者が関わっていました。設立当初から、ガルフ石油の強力な資金援助を受けており、チームの車両はガルフのロゴと特徴的なライトブルーとオレンジのカラーリングで知られました。

フォードGT40時代：成功への第一歩

FAV解散後、JWAはフォードからGT40事業を引き継ぎました。1966年はフォードの方針により、個人チームへのサポートに重点を置いていましたが、独立後はガルフ石油の資金を基に、GT40をベースにした独自のスポーツカー「ミラージュM1」を開発。高い競争力を誇るミラージュは、数々のレースで勝利を収め、その存在感を示しました。1968年からは、メイクス国際選手権に参戦。コスワースDFVエンジンの供給が叶わなかったものの、改良型GT40でル・マン24時間レースを含む5勝を達成し、フォードの年間優勝に貢献しました。1969年も引き続き活躍し、ル・マン24時間レース4連覇に貢献しましたが、同時にフォードからの委託事業は終了しました。

ポルシェ時代：新たな挑戦

1970年から1971年にかけては、ポルシェと契約を結び、ポルシェ908と917でメイクス国際選手権に参戦しました。JWAはポルシェ917の空力的な欠点を指摘し、改善策を提案するなど、技術面でも貢献しました。この2年間で数々の勝利を収め、ポルシェの年間優勝に大きく貢献しましたが、ル・マン24時間レースでは優勝を逃しました。この期間には、税制優遇措置の活用を目的として、フォーミュラ・フォード用の「ミラージュM5」も製造・販売していました。

ガルフミラージュ時代：独自路線の開拓

1972年からは、独自のスポーツカー「ガルフミラージュM6」を開発し、メイクス世界選手権に参戦しました。フォード製のDFVエンジンや、ウェズレイクが開発したWRP-190エンジンに対応できるよう、シャシは2種類用意されました。幾多の挑戦を経て、1973年にはフランコルシャン1000キロメートルで1-2フィニッシュを達成するなど、高いパフォーマンスを発揮しました。しかし、ウェズレイクとの間で開発費の支払いをめぐる訴訟問題が発生するなど、苦難もありました。

1974年には、チーム名を「ガルフ・リサーチ・レーシング(GRR)」に変更し、車両名も「ガルフ・フォード」に変更。1975年には、世界経済の低迷やスポーツカーレースの人気低下などにより、チームの運営は縮小されました。しかし、ル・マン24時間レースに集中することにより、解散を1年間延期しました。

そして1975年、ル・マン24時間レースでは、新型車「GR8」で1位と3位を獲得するという金字塔を打ち立てました。この輝かしい勝利の後、11月30日にJWAは正式に解散しました。しかし、その技術と精神は、後継者によって受け継がれ、レーシング界の歴史にその名を刻み続けることとなったのです。

参考文献

檜垣和夫　『フォードGT－MkI/MkII/Jcar/MkIV/GT40/P68/69』　二玄社〈SPORTSCAR PROFILESERIES〉、2006年
檜垣和夫　『ポルシェ－906/910/907/908/917』　二玄社〈SPORTSCAR PROFILESERIES〉、2006年
Ed McDonough, Gulf-Mirage: 1967 to 1982, Dorchester: Veloce Publishing, 2012.
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