Joost

Joost（ジュースト）は、P2P（ピアツーピア）技術を基盤としたインターネットテレビ配信システムです。このシステムは、ファイル共有ソフト「Kazaa」やインターネット電話ソフト「Skype」の開発者として知られるニクラス・センストロームとヤーヌス・フリースによって開発されました。

Joostという名称は、「Juiced（ジュースト）」という言葉に由来しており、絞りたてのジュースのように新鮮で活き活きとしたコンテンツを配信するという意味が込められています。この名称には、常に新しい、魅力的なコンテンツを提供し続けるという開発チームの意気込みが表れています。

開発は2006年に「The Venice Project」というコードネームで始まりました。センストロームとフリースは、ニューヨーク、ロンドン、ライデン、トゥールーズなど、世界各地から約150人の開発者を集め、国際的な開発チームを組織しました。このグローバルなチーム構成が、多様な視点を取り入れた革新的なシステムの開発に貢献しました。

Joostは、開発段階から大手メディア企業との連携を視野に入れていました。ワーナーやバイアコムといった大手メディア企業との提携をすでに実現しており、コンテンツの充実を図っていました。さらに、FOXネットワークとの交渉も進めており、より広範なコンテンツの提供を目指していました。これらの提携は、Joostが単なる技術プラットフォームではなく、メディア業界全体に影響を与える可能性を示唆していました。

2007年10月には、一般ユーザー向けのベータ公開を開始し、多くのユーザーがJoostのサービスを体験しました。このベータ公開を通じて、システムの改善やユーザーからのフィードバック収集を行い、より使いやすいプラットフォームへと進化させました。

しかし、2009年6月30日（現地時間）、Joostは事業戦略の大幅な転換を発表しました。従来のコンシューマー向け動画配信サービスから、企業（法人）向けのビデオプラットフォームへと事業の軸足を移すことを決定したのです。この決定は、インターネット動画配信市場の競争激化や、企業がより専門的なビデオプラットフォームを求める傾向に対応したものでした。

この事業転換により、Joostはエンタープライズ向けのビデオ配信ソリューションに注力することになりました。企業が従業員教育やマーケティング活動、社内コミュニケーションなどで動画を効果的に活用するためのプラットフォームとしての役割を担うことになったのです。

Joostのサービスは、P2P技術を活用することで、効率的な動画配信を実現していました。この技術は、サーバーへの負荷を分散し、高品質な動画を安定して配信することを可能にしました。また、P2Pネットワークは、大規模な配信においても柔軟に対応でき、ユーザー数の増加にも対応できるという利点がありました。

Joostの開発と事業転換は、インターネット動画配信の歴史において、重要な転換点の一つと言えるでしょう。初期のP2P技術を活用した配信システムから、企業向けプラットフォームへの移行は、技術と市場のニーズの変化を如実に表しています。また、Joostは、インターネット動画配信の可能性を示唆するとともに、その課題も浮き彫りにしました。

関連情報として、Joostの公式サイト（英語）が提供されており、詳細な情報を確認することができます。

Joost公式（英語）

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