KANのロックボンソワ

『KANのロックボンソワ』は、北海道のSTVラジオで2004年 10月2日から2024年 3月30日まで約19年半にわたって放送されたラジオ番組です。シンガーソングライターのKANがメインパーソナリティを務め、毎週土曜日の深夜に音楽と共に独特の世界観を展開し、多くのリスナーに愛されました。

番組は2004年秋にスタートし、KANの自由な語り口と深い音楽知識、そしてユーモアセンスが融合した唯一無二の内容で人気を博しました。長きにわたりSTVラジオの深夜を彩る看板番組の一つとして定着しましたが、番組の歴史は晩年に大きな変化を迎えることになります。

2023年に入り、KANが病気療養に入ったことが明らかになりました。同年4月8日の放送では、今後、KANが出演できない場合には代理パーソナリティが担当する可能性が示唆されます。その後、KANは体調と向き合いながら可能な範囲で出演を続けつつ、代理パーソナリティの協力を得て番組は放送されていきました。しかし、治療が長期化し、その都度代理パーソナリティを探すことが難しくなったため、同年10月7日の放送で番組体制の大幅な変更が発表されます。この変更により、KANの出演は原則として第1週と第5週に限定され、第2週は宮崎由加（『宮崎由加のボンボンボンソワ』）、第3週は小片リサ（『小片リサのラブボンソワ』）、第4週は入江里咲（Juice=Juice）（『Juice=Juice 入江里咲のスマイルボンソワ』）がそれぞれ固定のパーソナリティとして担当する形となりました。各週ごとに異なるパーソナリティが、それぞれのタイトルを冠した番組を放送するという、変則的ではありますが、番組を継続するための新たな試みでした。

しかし、病状は依然として厳しい状況が続きました。2023年11月、KANは治療に専念するため、この月最初の放送となる11月4日の出演を見送ることを余儀なくされます。この回は代わりに山﨑愛生（モーニング娘。当時'23）が『モーニング娘。'23 山﨑愛生のメイボンソワ』としてパーソナリティを務めました。そして、残念ながら2023年11月12日、KANが61歳という若さで永眠されたという訃報が届きました。

KANの逝去後も番組はしばらく放送を継続しました。2023年12月30日には、KANを偲ぶ2時間の追悼特別番組「よければ一緒に」が放送され、多くのリスナーが故人を追悼しました。その後も、固定の代理パーソナリティ体制で番組は放送され続けましたが、2024年 3月30日の放送をもって、『KANのロックボンソワ』は約19年半の歴史に静かに幕を下ろしました。番組終了後、後継番組として『ボンソワモンシュエル』がスタート。放送時間は日曜深夜0時30分へと変更されましたが、第2週担当が宮崎由加から稲場愛香に交代した点を除き、他の週の担当パーソナリティや番組タイトルは引き継がれる形となりました。

メインパーソナリティであるKANの他、病気療養中の番組を支えたパーソナリティとして、2023年10月からは宮崎由加（第2週）、小片リサ（第3週）、入江里咲（Juice=Juice）（第4週）がレギュラー出演しました。また、KANが休演した際には山﨑愛生（モーニング娘。）が代演を務めたこともありました。

番組内で特に人気だったコーナーとしては、KANの自宅に保管された膨大な音楽ライブラリーを紹介する「押し入れミュージック」がありました。和室の押し入れからは邦楽を五十音順に、洋室のクローゼットからは洋楽をアルファベット順に毎週1曲ずつ紹介し、その曲にまつわるエピソードなどを語るものでした。また、「デモね、涙が出ちゃうのよ♡」というコーナーでは、KAN自身が制作した楽曲のデモ音源と、それがどのようにアレンジされ世に出されたかを対比させながら紹介。制作のきっかけや商品化に至るまでの秘話などが披露され、リスナーはKANの音楽制作の裏側を垣間見ることができました。2006年10月に始まった「世界の国歌のコーナー」では、文字通り世界各国の国歌を紹介。時には地球儀をプレゼントする国歌イントロクイズ企画「国歌ドレミファドン」も実施されました。番組末期に開始された「ぐるんぐるんミュージック！」は、頭の中で繰り返される曲のフレーズを特定するというユニークな企画でしたが、KAN最後の出演となった2023年10月7日の放送が初回であり、結果的にこのコーナーが放送されたのは1回のみとなりました。

その他、番組からは「ボンソワギターピック」や「携帯ストリップ」といった個性的なノベルティグッズが誕生しました。番組のオープニングには、ダリル・ホールの楽曲『ドリームタイム』が長年使用されました。

『KANのロックボンソワ』は、約20年にわたり、KANの音楽への深い愛情とユニークな人柄が伝わる番組として、多くのリスナーの心に深く刻まれています。病気と闘いながらも最期までラジオを通じて音楽と向き合ったKAN、そして番組を支えた人々によって紡がれた歴史は、STVラジオにおける深夜放送の一つの時代を築きました。

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