KEPD 350
KEPD 350 (タウルス)
KEPD 350、一般にタウルス（TAURUS）として知られるこのミサイルは、スウェーデンのサーブ・ボフォース・ダイナミクスとドイツのMBDAドイチュラントの合弁事業であるタウルス・システムズによって開発・製造された、長射程の空中発射巡航ミサイルです。現在、ドイツ、スペイン、韓国の各国軍で採用されており、堅牢な目標に対する精密攻撃能力を提供します。
性能と特徴
タウルスは、優れたステルス設計を取り入れており、敵のレーダーによる探知を困難にしています。公式に発表されている射程は500km以上であり、発射母機を敵の防空圏外に留めながら目標を攻撃することが可能です。マッハ1クラスの高速で飛行するターボファンエンジンを動力とし、トーネード、ユーロファイター タイフーン、サーブ グリペン、F/A-18、F-15Kといった幅広い種類の航空機に搭載・運用が可能です。ミサイル全体の重量は約1400キログラム、最大直径は約1メートルです。電子妨害を含む自己防御手段も備えています。
特殊な弾頭「Mephisto」
タウルスの最大の特徴の一つは、Mephisto（Multi-Effect Penetrator HIghly Sophisticated and Target Optimised）と呼ばれる、重量500キログラム級の二段式多目的貫通弾頭です。この弾頭は、コンクリートや土壌を貫通するための事前装薬と初期貫通部、そして内部に侵入した後、最適な効果を得るために爆発タイミングを調整可能な可変遅延信管を備えた主弾頭で構成されています。これにより、特に強化された地下バンカーや指揮所、通信施設、滑走路、橋梁、艦船などの堅固な目標に対して高い破壊力を発揮します。
高度な誘導システム
タウルスの誘導システムは複雑かつ冗長性が高い設計となっています。攻撃目標、敵の防空システムの位置、地形データなどを基に、詳細な飛行経路が事前にミッションプランナーによってプログラムされます。発射後、ミサイルは慣性航法装置（INS）、画像ベース航法（IBN）、地形参照航法（TRN）、そしてGPSを組み合わせた複合誘導により、地形に沿った低空飛行で目標エリアへ向かいます。特にIBNやTRNを活用することで、GPSが利用できない、あるいは妨害されている状況下でも長距離を誘導される能力を持っています。目標近傍に到達すると、ミサイルは「バント」と呼ばれる急上昇機動を行い、目標捕捉および弾頭の貫通に最適な角度と高度を取ります。終末誘導では、高解像度のサーマルイメージング（赤外線誘導）とIBNが精密な誘導を支援します。また、ミサイルのカメラで捉えた画像と事前に用意された目標の3Dモデル（DSMAC）を照合して目標を特定する機能も有しています。もし目標の特定や画像照合が困難な場合、代替の誘導システムに切り替えるか、巻き添え被害のリスクが高いと判断される場合には、設定された安全な地点に自ら墜落する選択肢もプログラム可能です。
主な運用国
タウルスは複数の国に輸出され、運用されています。
ドイツ: ドイツ空軍はトーネードIDS戦闘機用に600基のタウルスを発注し、2010年までに全て受領しています。
スペイン: スペイン空軍はF/A-18戦闘機用に43基を取得し、2010年に納入が完了しました。
* 韓国: 韓国空軍はF-15Kスラムイーグル戦闘機に搭載するため、アメリカからの類似ミサイル取得が難航した後、タウルスの導入を決定しました。合計で260基の発注が行われ、2016年末から納入および実戦配備が開始されています。韓国向け仕様（KEPD 350K）は、GPS妨害対策として強化された受信機を搭載しています。
派生型の開発
タウルス・システムズや韓国は、更なる派生型についても検討または開発を進めています。韓国向けのKEPD 350Kが強化されたGPS受信機を持つほか、より小型軽量な航空機への搭載を目指した射程約400kmの小型版KEPD 350K-2が提案されています。また、韓国はタウルスを基盤として、次期戦闘機KF-Xに搭載する独自の長距離空対地ミサイルを開発する計画も発表しています。
タウルスKEPD 350は、現代の紛争におけるスタンドオフ攻撃能力の重要な要素であり、その高度な性能と堅牢な設計は、多くの潜在的脅威に対して有効な抑止力および攻撃手段となっています。
KEPD 350、一般にタウルス（TAURUS）として知られるこのミサイルは、スウェーデンのサーブ・ボフォース・ダイナミクスとドイツのMBDAドイチュラントの合弁事業であるタウルス・システムズによって開発・製造された、長射程の空中発射巡航ミサイルです。現在、ドイツ、スペイン、韓国の各国軍で採用されており、堅牢な目標に対する精密攻撃能力を提供します。
性能と特徴
タウルスは、優れたステルス設計を取り入れており、敵のレーダーによる探知を困難にしています。公式に発表されている射程は500km以上であり、発射母機を敵の防空圏外に留めながら目標を攻撃することが可能です。マッハ1クラスの高速で飛行するターボファンエンジンを動力とし、トーネード、ユーロファイター タイフーン、サーブ グリペン、F/A-18、F-15Kといった幅広い種類の航空機に搭載・運用が可能です。ミサイル全体の重量は約1400キログラム、最大直径は約1メートルです。電子妨害を含む自己防御手段も備えています。
特殊な弾頭「Mephisto」
タウルスの最大の特徴の一つは、Mephisto（Multi-Effect Penetrator HIghly Sophisticated and Target Optimised）と呼ばれる、重量500キログラム級の二段式多目的貫通弾頭です。この弾頭は、コンクリートや土壌を貫通するための事前装薬と初期貫通部、そして内部に侵入した後、最適な効果を得るために爆発タイミングを調整可能な可変遅延信管を備えた主弾頭で構成されています。これにより、特に強化された地下バンカーや指揮所、通信施設、滑走路、橋梁、艦船などの堅固な目標に対して高い破壊力を発揮します。
高度な誘導システム
タウルスの誘導システムは複雑かつ冗長性が高い設計となっています。攻撃目標、敵の防空システムの位置、地形データなどを基に、詳細な飛行経路が事前にミッションプランナーによってプログラムされます。発射後、ミサイルは慣性航法装置（INS）、画像ベース航法（IBN）、地形参照航法（TRN）、そしてGPSを組み合わせた複合誘導により、地形に沿った低空飛行で目標エリアへ向かいます。特にIBNやTRNを活用することで、GPSが利用できない、あるいは妨害されている状況下でも長距離を誘導される能力を持っています。目標近傍に到達すると、ミサイルは「バント」と呼ばれる急上昇機動を行い、目標捕捉および弾頭の貫通に最適な角度と高度を取ります。終末誘導では、高解像度のサーマルイメージング（赤外線誘導）とIBNが精密な誘導を支援します。また、ミサイルのカメラで捉えた画像と事前に用意された目標の3Dモデル（DSMAC）を照合して目標を特定する機能も有しています。もし目標の特定や画像照合が困難な場合、代替の誘導システムに切り替えるか、巻き添え被害のリスクが高いと判断される場合には、設定された安全な地点に自ら墜落する選択肢もプログラム可能です。
主な運用国
タウルスは複数の国に輸出され、運用されています。
ドイツ: ドイツ空軍はトーネードIDS戦闘機用に600基のタウルスを発注し、2010年までに全て受領しています。
スペイン: スペイン空軍はF/A-18戦闘機用に43基を取得し、2010年に納入が完了しました。
* 韓国: 韓国空軍はF-15Kスラムイーグル戦闘機に搭載するため、アメリカからの類似ミサイル取得が難航した後、タウルスの導入を決定しました。合計で260基の発注が行われ、2016年末から納入および実戦配備が開始されています。韓国向け仕様（KEPD 350K）は、GPS妨害対策として強化された受信機を搭載しています。
派生型の開発
タウルス・システムズや韓国は、更なる派生型についても検討または開発を進めています。韓国向けのKEPD 350Kが強化されたGPS受信機を持つほか、より小型軽量な航空機への搭載を目指した射程約400kmの小型版KEPD 350K-2が提案されています。また、韓国はタウルスを基盤として、次期戦闘機KF-Xに搭載する独自の長距離空対地ミサイルを開発する計画も発表しています。
タウルスKEPD 350は、現代の紛争におけるスタンドオフ攻撃能力の重要な要素であり、その高度な性能と堅牢な設計は、多くの潜在的脅威に対して有効な抑止力および攻撃手段となっています。
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