KTM・1190RC8

KTM 1190RC8：スーパースポーツの頂点を目指した挑戦

KTM Sportmotorcycle AGが、ワールドスーパーバイク選手権（WSBK）参戦を目標に2008年に発表した1190RC8は、同社のスーパースポーツモデルのフラッグシップとして君臨しました。1,148cc（後にRモデルでは1,194cc）の水冷V型2気筒エンジンを搭載し、同社製オートバイの中でも最高峰のエンジン性能と走行性能を誇りました。大胆でアグレッシブなデザインは、キスカデザインによるもので、マット仕上げの外装がその力強さを際立たせています。

妥協なきスペックと扱いやすさの両立

1190RC8は、その高性能ぶりを様々な箇所で見て取ることができます。前後にはWP製のフルアジャスタブルサスペンション、ブレーキはブレンボ製の高性能キャリパー（フロント4ポットラジアル、リア2ポット）を採用。ホイールには軽量なマルケジーニ製の鍛造ホイールが装着され、徹底した軽量化と高性能化が図られています。これらの装備から、非常にピーキーで扱いにくいマシンを想像するかもしれませんが、実際は低回転から高回転までスムーズな出力特性を持ち、レーサーとしては比較的高いハンドル位置と相まって、非常に乗りやすいマシンに仕上がっています。

リッタースーパースポーツとしては異例なほどの高いライディング自由度を誇り、まるでモタードバイクにカウルを装着したかのような独特なフィーリングは多くのライダーを魅了しました。軽量な車体も相まって、ウィリーやドリフト走行といったエクストリームなライディングにも対応できる高いポテンシャルを秘めていました。

レースでの活躍と進化

1190RC8はその高いポテンシャルをレースシーンでも証明しています。2010年にはIDMドイツスーパーバイク選手権でマニファクチャラーズタイトルを獲得。Martin Bauer選手は同選手権で7冠を達成するなど、その実力を遺憾なく発揮しました。一方、鈴鹿8時間耐久ロードレースにも参戦。KTM HAMAGUCHIレーシングチームや、他チームによって幾度と挑戦が続けられました。完走を果たした年もありましたが、リタイアに終わったレースもあったりと、耐久レースの過酷さを改めて認識させられる結果となりました。

2010年には、エンジン排気量を拡大し、細かな設定変更を可能とした上位モデルの1190RC8 Rが登場。一時期はスタンダードモデルとRモデルの併売が行われましたが、2011年からはRモデルのみの販売となりました。そして2016年、1190RC8シリーズは生産を終了しました。

まとめ

KTM 1190RC8は、WSBK参戦を目指した野心的なプロジェクトから生まれた、高性能と扱いやすさを両立した稀有なスーパースポーツモデルでした。その高いポテンシャルはレースシーンでも証明され、多くのライダーに愛された一台と言えるでしょう。生産終了から数年が経過した現在でも、その存在感は色褪せることなく、多くのファンを魅了し続けています。

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