KTM・RC16

KTM RC16：MotoGPを席巻する異端のレーシングマシン

オーストリアのバイクメーカー、KTMが開発したMotoGPクラス参戦マシンRC16は、その独特の設計思想と、若手ライダーの育成システムによって、MotoGPの世界に新たな風を吹き込んできました。2017年のMotoGPフル参戦開始から、着実なステップアップを続け、2020年には念願の初優勝を達成するなど、その存在感を増しています。

他社とは異なる設計思想

多くのMotoGPマシンがアルミニウム合金やカーボンファイバー製のツインスパーフレームを採用する中、RC16はスチールパイプで構成されたトレリスフレームを採用しています。これは、KTMがダカールラリーなどで培ってきた経験と、市販車との共通部品の活用を考慮した結果です。この設計は、フロントへの依存度が低く、リアをスライドさせながらマシンをコントロールする、独特のライディングスタイルを要求します。

KTMは、このトレリスフレームの特性を最大限に活かすべく、グループ企業であるWP製のサスペンションを採用しています。オーリンズといった他社製のサスペンションとは異なる特性を持つWPサスペンションは、RC16の独特なハンドリングに貢献しています。

元GPライダーの青木宣篤氏は、RC16のフレーム特性からくるこの独特のライディングスタイルについて分析しています。RC16はフロントへの依存度が低いため、リアをスライドさせながらコーナーをクリアする、独特のテクニックが必要となるのです。KTMの若手ライダー、ブラッド・ビンダーやミゲル・オリベイラなどは、このライディングスタイルに長けており、RC16の高いポテンシャルを引き出しています。

着実な進化と成果

2016年のバレンシアGPでワイルドカード参戦を果たしたRC16は、2017年から本格的にMotoGPに参戦開始しました。初期の頃は苦戦が続きましたが、開発を着実に重ね、2018年にはエスパルガロが初表彰台を獲得。2019年にはテック3チームがKTMのサテライトチームとなり、体制強化を図りました。さらに、元MotoGPライダーのダニ・ペドロサを開発ライダーとして迎え入れ、開発スピードを加速させました。

そして2020年、ついにRC16はブレイクスルーを果たします。ブラッド・ビンダーがチェコGPで初優勝。さらに、ミゲル・オリベイラもスティリアGPとポルトガルGPで優勝を果たしました。この年はエスパルガロも5回の表彰台を獲得するなど、KTMはチームとして大きな躍進を遂げました。

2021年にはコンセッション（優遇措置）を失い、他メーカーと同等の条件で戦わなければならなくなりましたが、KTMは着実に進化を続け、MotoGPのトップ争いに食い込んでいます。

まとめ

KTM RC16は、他社とは異なる設計思想と、独自のライダー育成システムによって、MotoGPの世界で存在感を示しています。スチール製トレリスフレームという個性的な選択、そしてそれを操るライダーたちの技術が、RC16の進化と成功を支えているのです。KTMの挑戦は、MotoGPの歴史に新たな1ページを刻みつけています。今後、RC16がどのような進化を遂げ、MotoGPの世界にどのような影響を与えるのか、目が離せません。

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