Kar98k

Karabiner 98 Kurz (Kar98k): 第二次世界大戦を象徴するドイツ軍のボルトアクション小銃

Kar98k、正式名称Karabiner 98 kurzは、ナチス・ドイツが第二次世界大戦で使用したボルトアクション式小銃として広く知られています。1898年制式採用されたGewehr 98 (Gew98)をベースに開発された騎兵銃で、そのコンパクトさと高い信頼性から、歩兵だけでなく、武装親衛隊などでも広く運用されました。1935年6月に制式採用され、終戦の1945年まで生産が続けられたことから、第二次世界大戦を通じてドイツ軍を象徴する武器の一つとなりました。大戦後も、東西ドイツを始めとした多くの国で長く使用され、現在でも儀仗銃として使われるなど、その歴史的な意義は深いと言えます。

Kar98kの特徴：信頼性と精度

Kar98kは、7.92mm口径で5発装弾のボルトアクション式ライフルです。「Karabiner」は騎兵銃を意味し、「98」はGew98の制式採用年である1898年を、「k」は「kurz」(短い)を表しています。騎兵が馬上射撃を行う際に必要な取り回しやすさと、背負った際の安定性を両立するため、銃身長は短く設計され、負革が側面に配置されています。この特徴は、後のドイツにおいて側面に負革を持つ小銃をKarabinerと呼ぶ慣習を生み出しました。

アメリカやソ連などでは既に半自動小銃の実用化が進んでいた時代においても、Kar98kは高い命中精度、信頼性の高い安全装置、そして効率的な生産性によって、終戦まで生産され続けました。その総生産数は1100万丁を超え、開発元のモーゼル社だけでなく、複数のドイツ国内の銃器メーカー、さらには占領下の国外工場まで動員して生産が行われたと推定されています。特に精度の高い個体は、4～6倍程度の望遠照準鏡と組み合わせることで狙撃銃として使用され、戦争末期のドイツ狙撃兵にとって連合軍兵士への脅威となりました。

Kar98kの系譜：Gew98からKar98kへ

Kar98kはGew98から派生したものであり、その歴史を紐解くと、騎兵銃Kar98、Kar98a、Kar98bといった改良型を経て誕生しました。

Kar98: Gew98の騎兵銃型として1900年頃から開発が始まり、銃身長の調整を経て最終モデルKar98aが1907年に完成しました。
Kar98a (Kar98AZ): Kar98の最終型であり、Kar98kとほぼ同じ全長を持ちながら、銃身覆いや叉銃用金具など異なる点も有していました。
* Kar98b: 第一次世界大戦後のヴェルサイユ条約による軍縮の影響で、既存のGew98を改良したモデルとして採用されました。銃身長はGew98と同じ740mmでしたが、側面に負革が付いたことからKarabinerと呼ばれていました。

さらに、モーゼル社は、短銃身小銃の潮流に対応するため、Gew98を短縮したモーゼル・スタンダードモデル1924や、ドイツ郵政省用小銃を開発。これらのモデルは、Kar98kのデザインに大きく影響を与えました。

Kar98kの生産とバリエーション

Kar98kの生産は1934年に始まり、モーゼル社、ザウエル社など複数のメーカーが関与しました。ドイツ国内だけでなく、占領下のオーストリアやチェコスロバキアでも生産が行われ、総生産数は様々な推計値がありますが、シリアルナンバー調査によると11,367,893丁と推定されています。ただし、この数値には、兵站部で既存の部品を組み合わせて製造された銃は含まれていません。

生産期間を通じて基本的なメカニズムやデザインは変わらなかったものの、戦況の悪化に伴い、部品の製造方法が変更されるなど、細かなバリエーションが存在します。1944年からは、戦時省力型であるKriegsmodell（クリークスモデル）の生産も開始されました。

Kar98kの派生型と関連モデル

Kar98kは、狙撃銃、チェコスロバキアで生産されたG24(t)、G33/40、FNモーゼルM1924、さらに短銃身のG40k、簡易生産型のVolkskarabiner98（VK98）など、様々な派生型や関連モデルが存在します。それぞれのモデルは、用途や生産時期、生産国によって特徴が異なっています。また、折り畳み銃床式や銃身と機関部が分離可能な試作型なども存在していました。

Kar98kのその後

現在でも、モーゼル社はGew98/Kar98kアクションを再現した狩猟用ライフルを販売しており、一部の国では民間所持も可能です。第二次世界大戦を象徴する武器の一つとして、Kar98kは、歴史、軍事、そしてコレクターの間で、今もなお関心を集めています。

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