Kh-55 (ミサイル)

Kh-55（Х-55）

Kh-55は、ソビエト連邦のラドゥガ設計局によって開発された空対地ミサイルです。西側諸国では、アメリカ国防総省においてはAS-15、NATOでは「ケント」として知られています。1976年に開発が始まり、1982年にはTu-95MSに装備されて正式に運用が開始されました。Kh-55は、同時期に開発されたアメリカのトマホーク巡航ミサイルやAGM-86から影響を受けていると考えられ、その外見や弾頭の威力、射程によってもその関連性が窺えます。

主にTu-95やTu-160といった戦略爆撃機に搭載され、戦略核兵器の輸送手段として利用されています。Tu-95では、機種によって異なりますが、最大で爆弾倉内に6発、外部に10発の合計16発を搭載できます。Tu-160では最大12発を搭載可能です。

Kh-55の発射時には、胴体中央の主翼や尾翼、さらには伸展式のフェアリングが展開され、引き出し式のターボファンエンジンが操作されます。これにより、周囲との隙間を無くしつつ、安定した飛行が可能になります。Kh-55の通常弾頭型は500kg、核弾頭型は200ktの威力を持ち、射程は約2,500kmに達します。また、潜水艦からの発射または地上からの発射が可能なバリエーションも存在します。

派生型

Kh-55には複数の派生型があり、各々に特化した特徴があります。

• - Kh-55OK: 改良型であり、弾体の左右にコンフォーマルタンクが装着されています。最大幅は0.77mで発射重量は1700kg、射程は3000kmとなります。
• - Kh-55SM: Kh-55OKの改良型であり、同様にコンフォーマルタンクを装着しています。
• - RK-55「グラナート」: 艦船や地上からの発射も可能です。ミサイルシステムのGRAUインデックスは3K10。
• - Kh-65SD: 合体デザインを持つ戦術巡航ミサイルで、射程は500～600kmに設定されています。
• - Kh-65SE: 対艦型ミサイルで、射程が250～280kmです。
• - ソーマール（Soumar）/ホヴェイゼ（Hoveizeh）: イランがKh-55を基に開発した地対地巡航ミサイルで、尾部にロケットブースターが追加されています。「ホヴェイゼ」はその派生型であり、射程は1,200kmです。
• - Quds-1: イエメンのフーシ派が開発した地対地巡航ミサイルで、射程は2,000kmと推定されています。

運用国

Kh-55は主にロシアが運用しています。また、ロシア海軍は潜水艦型を使用しています。イランもウクライナから入手したこのミサイルを使用しており、中国でも運用例が報告されています。逆に、ウクライナは退役したこのミサイルをイランに売却しています。

関連項目

Kh-55は世界のミサイル技術の進化において重要な役割を果たしており、他にも多くのミサイルシステムがこのミサイルをベースに開発されています。関連するミサイルとしては、Kh-101（後継モデル）やクラブ（新型対艦/対地ミサイル複合体）が挙げられます。

もう一度検索