Knol

Googleの知識共有プラットフォーム「Knol」とは

Knolは、Googleがかつて運営していたユーザー生成型のナレッジベースプロジェクトです。2007年12月に発表され、幅広いトピックをカバーする記事をユーザーが執筆・公開できるプラットフォームとして注目を集めました。しかし、2012年4月30日をもってサービスを終了しました。

Knolの概要

Googleの技術担当副社長ウディ・マンバー氏によって発表されたKnolは、科学的な概念から医療情報、歴史、娯楽、製品情報、ハウツー記事など、多岐にわたるトピックを対象としていました。マンバー氏によれば、Knolの記事は「そのトピックを初めて検索する人が読みたいと思うようなもの」を目指していたとされています。

"knol"という言葉は、"unit of knowledge"（知識の単位）を意味するGoogleによる造語で、プロジェクト全体を指すと共に、個々の記事も指していました。多くの人々は、KnolをGoogleがウィキペディアに対抗するために立ち上げたプロジェクトと認識していました。

当初、Knolは招待制のベータ版として公開されましたが、その後一般公開されました。しかし、2011年11月22日にサービス終了が発表され、2012年4月30日にサービスが停止しました。サービス終了後、記事のダウンロードはGoogle Takeoutを通じて可能となりました。

"knol"の日本語表記は公式には発表されていませんが、一部メディアでは「ノル」や「ノール」と表記されました。

Knolの形式

Knolの記事は、基本的に一人の著者によって執筆されました。他のユーザーが記事を編集するには著者の許可が必要で、読者は記事に対して評価やコメントをすることができました。また、同じトピックについて複数の著者がそれぞれ独自の視点で記事を作成することも可能でした。

Googleは、誰が何を書いたかを明確にすることで、コンテンツを利用する読者にとって有益になると考えていました。執筆者は自分の記事に広告を表示させるかどうかを自由に選択でき、クリエイティブ・コモンズライセンスを適用することも可能でした。広告を表示させた場合、執筆者は広告収益の一部を受け取ることができました。Googleは、Knolの編集には一切関与せず、編集責任と管理権はすべて執筆者に委ねられていました。

Knolに対する外部の反応

Knolの発表後、その動機や運営方法について様々な憶測が流れました。一部では、Knolがメディア産業全体への攻撃であるという見方もありました。Knolは、ウィキペディアなどの百科事典サイトのライバルとして捉えられた一方で、補完的な存在とも考えられました。ウィキメディア財団は、良質なフリーコンテンツの増加を歓迎しました。

ウィキペディアが中立的な観点に基づいて複数人で執筆されるのに対し、Knolは著者の視点を重視し、個人の意見や経験を反映した記事が特徴でした。一部では、Knolの形式がウィキペディアよりもAbout.comに近いという指摘もありました。また、GoogleがAbout.comを買収しようとした際にKnolの構想が生まれたという説も存在します。

Googleの検索結果の公平性についても懸念の声が上がりました。Knolの記事が検索結果で優遇されるのではないかという懸念に対して、Googleは他のコンテンツと同様に自然な検索結果を維持すると主張しました。

Knolの終了

Knolは、ユーザーに知識を共有する場を提供しようとしたGoogleの試みでしたが、最終的にはサービスを終了することになりました。しかし、Knolのコンセプトや技術は、後のGoogleのサービスに影響を与えた可能性も指摘されています。Knolの歴史は、インターネットにおける知識共有の進化を考える上で重要な事例の一つと言えるでしょう。

脚注

Knolは、ユーザーが専門知識を共有できるプラットフォームとして期待されましたが、さまざまな要因によりサービス終了に至りました。
Knolは、執筆者の個性を尊重したコンテンツ作成を特徴としていました。
Knolに対する外部の反応は賛否両論ありましたが、知識共有の可能性を広げたという点では評価できます。

外部リンク

knol.google.com (現在はアクセスできません)
Google Takeout（終了後のデータダウンロードサイト）'>Google Takeout
Google Codeページ'>Google公式ブログによる発表)

外部の反応

ITmedia - Google版Wikipedia? 知識共有ツール「knol」をテスト（2007年12月14日）
Duncan Riley （TechCrunch翻訳記事） - Knol―GoogleがWikipedia+Squidoo的なユーザー生成型知識コンテンツをテスト中 （2007年12月14日）
Duncan Riley （TechCrunch翻訳記事） - GoogleのKnolは「やりすぎ」か？（2007年12月15日）
産経MSN （共同） - グーグル、ネット百科参入　記名でウィキペディア対抗（2007年12月15日） - ウェイバックマシン（2007年12月15日アーカイブ分）
Scott Gilbertson　Wired News（WIRED VISION翻訳記事） - Googleの情報ハブ構想『Knol』:『Wikipedia』＋専門家ブログ （2007年12月17日）
ウォールストリートジャーナル　Scott Morrison （ITmedia翻訳記事） - Google版Wikipediaは成功するか 2007年12月17日
Michael Arrington（TechCrunch翻訳） - Google Knolについての考察 （2007年12月18日）
坂東慶太 - Gpedia？「対」で考えるのではなく知識の増量を歓迎しよう（2007年12月18日）
* 吉田健一 ZDnet Japan - Googleの人中心のナレッジマネジメント「knol」 - Google版「All About」（2007年12月23日）

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