LAIDBACKERS-レイドバッカーズ-

『LAIDBACKERS-レイドバッカーズ-』解説

『LAIDBACKERS-レイドバッカーズ-』は、2019年4月5日に公開された、橋本裕之監督による中編アニメーション映画です。クロックワークスが配給を担当しました。

概要

本作は、「平成最後の劇場オリジナルアニメ」と銘打たれ、2週間限定で劇場公開された日常系アクションアニメです。現代の京都を舞台に、異世界から魔王や勇者たちが転生してくる「逆異世界転生」という設定が特徴です。主人公の女子大生・本天沼久美が、ひょんなことから「魔王の欠片」を巡る騒動に巻き込まれていく物語が展開されます。

声優陣には、日高里菜、茜屋日海夏、大地葉、内山夕実、長縄まりあ、花守ゆみりなど、実力派が名を連ねています。

企画の発端は、上江洲誠氏の「シリアス路線の作品が続いたので、次は明るい作品が良い」という軽い提案からでした。上江洲氏は、日常系コメディをメインに意識しており、TVシリーズ化された場合は、「何も起こらない」ドラマにするつもりだったと語っています。

制作の段階から「自由」をベースに構成されており、登場キャラクターの結末は特に定められていませんでした。声優たちの演技によって、キャラクターの性格が肉付けされていくという、制作陣も楽しむ形で制作が進められました。監督の橋本裕之も、当初はアルバイトのつもりでオファーを受けていたそうです。

また、スピンオフコミックやノベライズなど、多岐にわたるメディアミックス展開もされています。

あらすじ

201X年の京都。赤い月の夜、上賀茂神社で、巨大な鎧武者と戦う5つの影がありました。レンチを武器に戦う赤髪の少女・三乃ハラミ、魔法で援護するグラマラスな美女・草薙・K、しゃべる犬・アーネリア、女子小学生のらん、そして女子大生の本天沼久美。激闘の末、彼らは鎧武者の力の源である「魔王の欠片」を奪取し、その場を後にします。

かつて、煉獄の魔王ヴァルヴァランが支配する世界がありました。人々が絶望に打ちひしがれる中、地方領主の娘アーネリアが立ち上がり、反旗を翻します。各地から集められた精鋭は、狂戦士ハラミ、魔道士K、暗殺者である舞阪舞の3人。彼らは魔王軍を追い詰め、瀕死の重傷を負った魔王は「魔王転生」の秘術で異世界に逃亡します。その際、アーネリアたち4人もまた、異世界へと転生してしまいます。

祖母の駄菓子店「おばけ屋」を継ぐため京都に引っ越してきた久美は、ある日、店を荒らすハラミたちに遭遇します。異世界から来たという4人に居候されることになった久美は、彼女たちとの共同生活と、各地に散らばった「魔王の欠片」の回収に協力することになります。

しかし、欠片集めに熱心な4人に対し、舞はマイペースにアイドル活動に打ち込んでいました。一方、魔王であったらんは、欠片探しに参加しつつも、自分の力の源である欠片を管理してもらっていました。アーネリアは、この世界の異変は魔王の力が原因だと主張しますが、舞は、無力化されたらんは無害だと反論します。

そんな中、舞はTVプロデューサーにライブを見てもらう機会を得て意気込みます。同じ頃、らんは夏休みの宿題である絵日記を描けずに困り、久美に助けを求めます。ハラミは五山送り火に皆を誘いますが、当日はあいにくの雨。送り火の中止が危ぶまれる中、突然、炎が燃え盛り始めます。魔王の力だと気付いたハラミとらんは現場に急行し、炎の巨人と戦うことになります。

一方、ライブ直前の舞の楽屋にKが訪れ、アーネリアからの緊急メッセージを伝えます。ライブと仲間の危機の間で悩む舞に、Kは「あっちのことは大丈夫だから」と優しく諭します。

激化する炎の巨人との戦いで、ハラミは致命的なダメージを受け倒れてしまいます。そこに、舞を連れたKが駆けつけ、3人は反撃を開始します。しかし、巨人の圧倒的な力に苦戦します。らんが魔力を開放し、「魔王の欠片」を使用し、ハラミの武器を復活させます。ハラミはKと舞との連携で巨人を撃破します。アーネリアは、らんを誤解していたことを反省し、欠片を全て集めて元の世界に戻ったら皆に謝罪するという、らんの願いを叶えるため協力することを誓います。

その後、送り火は無事に終わり、らんの絵日記も完成し、6人はそれぞれの日常へと帰っていきます。

登場人物

三乃ハラミ（声 - 日高里菜）
15歳。元狂戦士。獣人の血を引く。元の世界では恐れられていたが、現代ではニートとして自堕落な生活を送っている。戦闘能力は高い。

舞阪舞（声 - 茜屋日海夏）
14歳。元武道家。転生してから自分が美少女であることに気づき、アイドル活動に励んでいる。

草薙・K（声 - 大地葉）
17歳。元魔道士。アーネリアの参謀。オタク趣味に没頭する残念美人。

アーネリア（声 - 内山夕実）
18歳。元姫騎士。解放軍のリーダー。現在は犬の姿になっている。真面目な性格。

らん（ヴァルヴァラン）（声 - 長縄まりあ）
11歳。元魔王。現在は小学生。魔王の力の一部を所持しているが、心優しい少女。

本天沼久美（声 - 花守ゆみり）
18歳の美大生。駄菓子屋の経営者。異世界人との同居に振り回される。

鷲ノ宮優子（声 - 藤田咲）
25歳の小学校教師。らんの保護者。ミステリアスな雰囲気を持つ。

ロン（声 - 福山潤）
年齢不詳の中華料理屋。ハラミたちの協力者。

レナード（声 - 小西克幸）
年齢不詳のインド料理屋。ロンの友人。

鎧武者
物語冒頭でハラミたちと戦った敵。「魔王の欠片」が憑依した刀の集合体。

炎の巨人
五山送り火の炎に「魔王の欠片」が取り憑いた姿。圧倒的な力を持つ。

スタッフ

監督：橋本裕之
脚本：上江洲誠
キャラクター原案：鈴木次郎
アニメーション制作：Studio五組

主題歌

『Precious Piece』
作詞・作曲・編曲：kz、歌：キズナアイ

制作

本作は、上江洲誠氏が「明るく楽しい作品を作りたい」という提案から始まりました。当初は日常系コメディを想定していましたが、映画化に際し、クライマックスのバトルシーンが追加されました。監督の橋本裕之は、制作当初、アルバイトのつもりで参加していたそうです。キャラクター原案には、上江洲氏がファンであった鈴木次郎氏が起用されました。声優陣は、オーディションや上江洲氏のオファーによって決定されました。制作陣は、本作を「変なアニメ」と評しており、自由な発想で制作されたことが伺えます。

公開

2018年10月19日に劇場公開が発表され、2019年4月5日に全国劇場で2週間限定で公開されました。劇場公開と同時に、dアニメストアでレンタル配信も開始されました。

演技

声優陣は、キャラクター設定が確定していない状態で収録に臨み、それぞれの演技によってキャラクターの性格が肉付けされていきました。収録は、日常パートから進められ、声優陣は楽しんで制作に参加していました。

音楽

kzが、2000年代前半のアニメをイメージして作曲しました。挿入歌の『とびっきりシンパシー☆』は、アイドルソングを意識して作られています。主題歌の『Precious Piece』は、キズナアイのカラーを前面に出した楽曲となっています。

続編への構想

監督の橋本裕之は、本作を「道具だけを作ったつもり」と語っており、続編への含みを持たせています。また、本編で明かされていない裏設定や、TVシリーズを想定した多数のエピソードが存在することが明かされています。

コラボ・イベント

AnimeJapan 2019にて、駄菓子屋「おばけ屋」が再現されました。
焼肉店「七輪焼肉安安」とのコラボメニューが販売されました。
ゲームアプリ『エレメンタルストーリー』とのコラボイベントが実施されました。
渋谷マルイで「おばけ屋出張所」がオープンしました。

メディアミックス展開

スピンオフコミック『LAIDBACKERS-レイドバッカーズ- ～元魔王らんちゃんの異世界せいかつ～』が連載されました。
ノベライズ『LAIDBACKERS -レイドバッカーズ- THE NOVEL』が発売されました。

『LAIDBACKERS-レイドバッカーズ-』は、自由な発想と個性的なキャラクターが魅力の、ファンタジーアクションコメディ作品です。

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