LOCO DD 日本全国どこでもアイドル

LOCO DD 日本全国どこでもアイドル

2017年に劇場公開された『LOCO DD 日本全国どこでもアイドル』は、複数の短編から構成される日本のオムニバス映画です。タイトルの「LOCO DD」は、地方を拠点に活動するアイドルを指す「ロコドル」と、「ドラマ&ドキュメンタリー」を組み合わせた造語であり、その名の通り、地方アイドルを題材に、虚構としてのドラマと現実を記録するドキュメンタリーを融合させた独特な手法が採用されています。

この企画は、映画監督の島田元が中心となり、他の監督たちに声をかけたことから2015年末に始動しました。それぞれの監督が自らの関心に基づいて地方アイドルを選び、独自の視点で彼女たちの世界を映像化した意欲作として、約1年半の制作期間を経て2017年春に完成、同年9月30日に一般公開されました。

本作は、個性豊かな3つの作品で構成されています。

『Last DAYS～君といた場所～』

田中要次が監督・編集を手がけ、アイドルグループのオトメ☆コーポレーションを主演に迎えた作品です。車の助手席に座るオトメ☆コーポレーションのリーダー・久保田光と、運転席の田中要次とのドライブシーンが軸となり、数日前に撮影された劇中劇としてのメンバーによるガールズトークの様子が織り交ぜられます。田中監督は、主演ドラマのラストシーンが撮り終えられないまま悩み、そんな中で突然発表されたグループの解散宣言に直面します。解散ライブが迫る中、久保田とのドライブを通じて、グループを取り巻く状況やメンバーの真意に少しでも近づこうと試みる様子が描かれます。

主な出演者はオトメ☆コーポレーションのメンバーである久保田光、比留川知絵、藤本美帆、荒井菜緒らと、監督自身である田中要次。スタッフには撮影に大橋次郎、ウォン・オンリンらが名を連ねています。

『ファンタスティック ライムズ!』

福岡出身の女性ヒップホップユニット、FantaRhyme（ファンタライム）に焦点を当てた作品で、大工原正樹が監督・脚本を担当しました。東京に短期滞在中のFantaRhymeのAyuとSayaの活動の様子――リハーサルやライブ、物販に精力的に取り組む姿がドキュメンタリータッチで捉えられる一方、彼女たちに近い設定のドラマパートが並行して展開されます。ドラマの舞台はAyuのアルバイト先のカフェ。 Sayaが頼りない兄から借金を無心される場面に、Ayuが口を挟んだことから姉妹喧嘩に発展し、飛び出したSayaが傲慢な態度のファンらしき男と遭遇します。カフェに残ったAyuと兄、そして外のSaya。それぞれの場所で「ダメな男」と向き合う中で、AyuとSayaの真っ直ぐな生き様が浮き彫りになります。

主演はFantaRhymeのAyuとSaya。その他、松下仁、青木佳文が出演。撮影は中瀬慧、照明は玉川直人、音楽はプロデューサーであるeichiが担当しています。

『富士消失』

静岡県富士宮市のご当地アイドル、3776の井出ちよのを追った作品で、島田元が監督・脚本を務めました。撮影当時中学生だったソロアイドル・井出ちよのが、明るくハキハキとインタビューに答える姿が描かれます。アイドルになったきっかけや衣装、振り付け、そしてユニークなプロデューサーについて語る様子、ライブ前の緊張、そして「3.11」という楽曲への思いなどが紹介されます。ライブ直前、手に持ったペットボトルのお茶の精霊に促され、ステージへ向かおうと目を閉じた瞬間、井出ちよのは不思議な夢の世界へと誘われます。その夢の中で、神聖な存在である富士山が消えてしまうという幻想的な物語が展開されます。

主演は井出ちよの（3776）。共演に石田彰（3776プロデューサー/蜃気楼牧師）、隈本吉成（お茶の精の声）など。撮影（ドラマ部分）は松本岳大、記録・制作は島田充子が務めています。

評価

本作は複数の映画関係者から注目を集めました。映画監督の鶴田法男は、公式サイトへの寄稿で「彼女たちの魅力を作品に昇華させることに成功した3人の監督たちは、それぞれに映画の神に感謝しただろう。その瞬間を観客も共有できるなんとも贅沢な今までにないアイドル映画だ」と評しています。また、映画監督の旦雄二は自身のブログで「島田元監督と大工原正樹監督のパートが、自由奔放、洒脱練達の語り口で、さすがと唸らされる面白さだ。俳優の田中要次監督も健闘している」「各篇いずれも、アイドルたちのひたむきさと、つくり手たちの気合いが、観ているこちら側にぐいぐい伝わってくる」と述べ、各作品の個性と、作り手およびアイドルたちの情熱を称賛しています。

『LOCO DD 日本全国どこでもアイドル』は、一般的なアイドル映画とは一線を画し、ドキュメンタリーとドラマを巧みに融合させることで、地方で独自の輝きを放つアイドルたちのリアルな側面と、フィクションならではの物語性を同時に描き出しています。それぞれの監督が選んだアイドルへの敬意と愛情、そして映画表現への探求心が結実した、ユニークなドキュメンタリー・ドラマ作品と言えるでしょう。

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