Logic Theorist

Logic Theorist: 第一歩を踏み出した人工知能プログラム

Logic Theoristは、1955年から1956年にかけてアレン・ニューウェル、ハーバート・サイモン、J・C・ショーによって開発されたコンピュータプログラムです。このプログラムは、現実の人間の問題解決能力の模倣を意図したもので、初めての人工知能プログラムとされています。特に、ホワイトヘッドとラッセルの著作『プリンキピア・マテマティカ』における52の数学的定理のうち38を証明し、一部の証明方法はさらに洗練されたものを発見しました。

開発の背景

Logic Theoristの開発が始まった1955年当時、人工知能はまだ確立された学問分野ではありませんでした。この「人工知能」という言葉が公に使われ始めたのは、翌年の夏のことです。サイモンは政治学者でもあり、以前には官僚制度や限定合理性の理論構築で知られていました。しかし、彼の研究は企業組織や人工知能の両方において、人間の判断力や問題解決能力の理解を必要とするものでした。

物理的な地図を描くためのプログラムを開発していたニューウェルは、1950年代初頭にランド研究所での経験を通じて、記号を処理する機械が人間の思考過程を模倣できる可能性を感じ取ります。それが、Logic Theoristの開発につながりました。このあたりに、彼らの研究の独創性が垣間見えます。

開発プロセス

ニューウェル、サイモン、そしてショーは協力し合い、Logic Theoristの開発に取り組みました。当初、プログラムの運用は人間による模擬実行で行われました。1956年1月に、彼らは自分たちの側で参加者を集め、手作業でプログラムのコンポーネントを再現しました。その結果、Logic Theoristが数学者のように定理を証明したことが示されました。

同年の夏には、ダートマス大学での会議（いわゆるダートマス会議）が開催され、ここで「人工知能」という言葉が広まります。ニューウェルとサイモンはLogic Theoristを披露しましたが、参加者たちの反応は期待外れでした。彼らは、 자신たちの発表が重要視されないことに驚いたと言います。

成果と影響

Logic Theoristは実際に『プリンキピア・マテマティカ』の第2章に含まれる52の定理のうち、38の証明を成功させました。このうち、定理 2.58（二等辺三角形の定理）の証明は、従来のものよりも洗練されていました。その後、彼らはLogic Theoristによる新たな証明を『The Journal of Symbolic Logic』に送ったものの、初等数学の新たな証明は大した注目を集めませんでした。執筆者がコンピュータプログラムであることに気が付かなかったようです。

さらに、Logic Theoristは後のAI研究において数々の重要な概念を提供しました。特に、探索木を使った推論の手法、ヒューリスティクスを使って探索空間を削減する方法、そしてプログラミング言語IPLの開発が挙げられます。特にIPLは、後のLISP言語に多大な影響を与え、現在でもAI研究において重要な役割を果たしています。

哲学的な意義

Logic Theoristの意義は、単に技術的な成果だけではありません。パメラ・マコーダックは、このプログラムが「知的で創造的な作業が機械でも可能であることを証明した」と述べており、人工知能の歴史において重要な意義を持ちます。またサイモンは、このプログラムによって物質的システムがどのようにして精神を宿すことができるかについて答えを模索したと語っています。

今もなお、Logic Theoristは人間の知性とは何かという問いを考えさせる存在であり、その影響はコンピュータ科学と哲学の両方に波及しています。アレン・ニューウェルとハーバート・サイモンによって開発されたこのプログラムは、人工知能の草創期における重要なマイルストーンであり、その後の研究に多くの示唆を与え続けています。

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