M1戦闘車

M1戦闘車：アメリカ黎明期の軽戦車

M1戦闘車は、1930年代にアメリカ陸軍の騎兵科向けに開発された軽戦車です。当時のアメリカ陸軍は機械化を推進しており、その一環として、ダグラス・マッカーサーの指示のもと、ロック・アイランド造兵廠で開発が進められました。

開発の背景

M1戦闘車の開発は、歩兵科向けのT2軽戦車と並行して進められました。これは、当時の財政的な制約から、歩兵科と騎兵科で全く異なる車両を新規に開発することが難しかったためです。T1E4軽戦車を母体とし、T2軽戦車とT5戦闘車が開発されました。

T2軽戦車はリーフスプリング式サスペンションを採用していましたが、T5戦闘車はVVSS（垂直渦巻スプリング・サスペンション）方式を採用。その後の改良でT2軽戦車もVVSS方式に変更され、M2A1軽戦車として制式化されました。

M1戦闘車は、速度と機動性を重視した設計が特徴でした。これは、アメリカの戦闘車開発が、クリスティー式快速戦車の影響を受けていたためです。

構成

M1戦闘車の主武装は、ブローニングM2 12.7mm重機関銃です。当時のアメリカ軍は、歩兵砲の車載型である37mm戦車砲よりも、貫徹力と連射能力に優れるM2重機関銃を、戦車の主武装として採用しました。M2重機関銃は、第一次世界大戦中のドイツの対戦車銃用の弾薬を参考に開発されたもので、対戦車能力も有していました。

副武装として、車体前方にM1919A4 7.62mm機関銃を備えています。乗員は、操縦手と副操縦手兼機銃手が搭乗。車体と砲塔は、溶接技術が未熟であったため、リベット留めでした。

エンジンは、コンチネンタル社製の空冷星型7気筒ガソリンエンジン、またはギバーソン社製の空冷星型9気筒ディーゼルエンジンを搭載。軽量な車体に大馬力の航空機用エンジンを搭載することで、路上最高速度72km/hという高速を実現しました。

運用

M1戦闘車は、1937年からアメリカ陸軍に導入され、1943年まで使用されました。当初は騎兵科向けの「戦闘車」として分類されていましたが、1940年に機甲科が創設されると、軽戦車に分類変更され、M1A1軽戦車と改称されました。

各型及び派生型

T5: 原型試作車。7.62mm機関銃を連装に搭載した小型砲塔を並列に2基搭載。
T5E1: 原型試作車。砲塔は非搭載だが、大型の固定戦闘室を持つ。
T5E2: 原型試作車。小型砲塔の並列搭載を単一の2人用砲塔に変更。後にM1戦闘車として制式化。
M1: 最初の生産型。D型砲塔を搭載。
M1A1: 八角形砲塔に換装し、履帯の接地面積を拡大。
M2: ギバーソン製ディーゼルエンジンに換装し、後方誘導輪を接地させて履帯の接地面積を拡大。
T3自走榴弾砲: M1戦闘車の車台を流用した自走榴弾砲の試作車。
T17 75mm自走榴弾砲: M1E3戦闘車の車台をベースとした自走榴弾砲の計画。
T7戦闘車: VVSSをクリスティー式サスペンションに換装した装輪装軌併用式車両。

登場作品

World of Tanks：アメリカ軽戦車T7 Combat Carとして登場。
ガールズ&パンツァー リボンの武者：「M1戦闘車」と称する「T7戦闘車」が登場。

関連項目

騎兵戦車
戦車一覧
T1軽戦車
M2軽戦車
九五式軽戦車
* 九二式重装甲車

M1戦闘車は、アメリカの戦車開発黎明期における重要な車両であり、その設計思想は、後のアメリカ戦車に大きな影響を与えました。

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