M66 (天体)

M66（NGC 3627）

M66は、しし座に輝く壮麗な棒渦巻銀河であり、NGC 3627としても知られています。この銀河は、すぐ近くに見えるM65やNGC 3628と並んで、「しし座の三つ子銀河（Leo Triplett）」として天体観測の対象として非常に有名です。これら3つの銀河は、同じくしし座銀河群に属しており、互いに重力的に影響し合っていると考えられています。

特徴的な形状

M66は、典型的な渦巻銀河とは異なり、その形状が歪んでいるのが大きな特徴です。周囲の「三つ子」メンバーからの強い重力の影響を受けていると考えられており、その結果、銀河の構造に変形が生じています。特に、銀河から伸びる2本の渦巻腕は非対称な形に変形しており、さらに銀河の中心にある核も、銀河全体の中心からずれた位置に存在しています。このような非対称な形状は、銀河同士の相互作用が進行中、あるいは過去に活発であった証拠であり、宇宙における銀河の進化を物語っています。

観測方法

M66は、観測機材の口径によって見え方が大きく変わります。双眼鏡でもその存在をぎりぎり確認できる程度の明るさを持っていますが、詳細な形状は捉えられません。口径10cmクラスの小望遠鏡を使用すると、いびつな楕円形として認識できるようになります。この口径でも、「三つ子」であるM65、M66、NGC 3628の3つの銀河を確認できますが、空の状態によってはNGC 3628が見えにくくなることがあります。口径20cmクラスの中望遠鏡では、これら3つの銀河はより鮮明に、誰にでもはっきりと捉えることができるようになります。さらに口径30cm以上の大型望遠鏡を用いると、M66の歪んだ渦巻腕の構造が明確に確認でき、非常に見応えのある眺めとなります。

観測の歴史

M66は、1780年3月1日にフランスの有名な天文学者シャルル・メシエによって発見されました。興味深いことに、M65もこの時に同時に発見されています。メシエは当時の記録で、M66が「たいへん微か」であり、M65に「極めて近い」ため、両者が同じ視野に見えることを特筆しています。彼はまた、以前にこの領域を通過した彗星の光によって、これらの天体を見落としていた可能性に触れています。

その後も多くの天文学者がM66を観測し、その特徴を記録に残しています。ウィリアム・ヘンリー・スミスは、M66を「明るい核を持ち、北西から南東に伸びる星雲」と表現しました。ロベールは、「はっきりした星状の核を持つ渦状」として、その極方向の変動や12個の星雲状凝縮部といった詳細を観察しています。クラークは、その見た目を「入り組んだ包みが並び、一部が彗星の頭から飛び出した放射線状のベールに囲まれた核に似ている」と詩的に描写しています。

超新星の観測

M66では、これまでに複数の超新星が観測されています。記録されているものとしては、SN 1973R、SN 1989B、SN 1997bs、SN 2009hdの4つがあります。これらの超新星の発見は、M66における星形成活動や、銀河内部での大質量星の最期を知る上で貴重な情報を提供しています。超新星観測は、銀河までの距離推定や宇宙論の研究にも重要な役割を果たしています。

M66は、「しし座の三つ子銀河」の一員としての存在感と、銀河同士の相互作用によって生じた独特の形状から、天体観測者や天文学者にとって常に興味の尽きない魅力的な天体であり続けています。

もう一度検索