MAA (歌手)

MAA：音楽とファッションの境界線を越えるアーティスト

MAAは、日本の音楽シーンで活躍する稀有な存在だ。歌手、作詞家、デザイナー、ディレクター、プロデューサー、コラムニスト、ブロガーと、その活動領域は多岐に渡る。神奈川県横須賀市で生まれ育ち、アメリカ人の父と日本人の母を持つ彼女は、幼少期から音楽に囲まれた環境で育った。1歳からスティービー・ミラー・バンド、3歳からはデフ・レパードやスコーピオンズといったロックバンド、シンディ・ローパーやマドンナといったポップアーティスト、そして日本の女性アイドルグループWinkなどを聴き、幅広い音楽性を培ってきた。

高校卒業後、音楽事務所スタッフとして働き始めるが、才能を見出された彼女は、歌謡ロックとヴィジュアル系を融合させたスタイルのロックバンド、MarBellのボーカルとしてデビュー。2008年5月3日に行われた『hide memorial summit』で初ライブを経験し、その圧倒的なパフォーマンスで関係者を驚かせた。バンド活動を経て、現在の事務所EXIT LINEにスカウトされ、ソロアーティストとしてMAAとして活動を始める。

ソロデビュー後は、ヴィジュアル系からダンスミュージックへと音楽性を変化させ、精力的な活動を展開。2010年9月22日には、レンタル・配信限定シングル『Ghost Enemy』でCDデビューを果たし、発売前に11,500枚もの異例のイニシャル数を記録。レコチョクの着うた配信でも上位にランクインするなど、大きな注目を集めた。その後も、m-flo、THE LOWBROWS、DJ MAARといったアーティストとのコラボレーションや、CASIO、レッドブルといった企業への楽曲提供など、その活動は多方面に広がっている。

MAAの音楽は、彼女自身の経験や感情を深く反映したものだ。10年間にわたる婚約者の死、そして兄の事故死という大きな悲しみを経験し、その痛みを作品に昇華させている。左腕には亡くなった兄の名前、お腹には恋人の星座のタトゥーを入れ、これらの出来事が彼女の音楽に大きな影響を与えていることは明らかだ。彼女の作詞は、自身のお気に入りのテントの中で行われることが多く、自然の中でインスピレーションを得ている様子が伺える。

音楽活動と並行して、MAAはレディースブランド『gitch』を立ち上げ、デザイナー、ディレクター、プロデューサーとして手腕を発揮。奇抜で独創的なデザインは多くの女性から支持を集め、ブランドを成功に導いた。2シーズンにわたる活動を経て、現在はブランドを引退しているものの、そのデザインセンスはMAAの多様な才能を象徴するものである。

2015年には第一子となる息子、リーヴァイを出産。母となった彼女は、ますます深みを増した表現力で音楽活動に臨んでいる。和製レディー・ガガと評されることもあるMAAだが、ラナ・デル・レイのような妖艶でミステリアスな雰囲気も持ち合わせている。彼女の目標とするアーティストはMe & Myであり、その独自の音楽性と世界観は、多くのリスナーを魅了し続けている。モデルとしても、h.NAOTO、GIVENCHY、Balenciagaなどのコレクションに出演するなど、ファッション界でも活躍している。

MAAは、音楽とファッションの境界線を越えて、独自の表現世界を創造し続けているアーティストだ。今後も彼女の活動から目が離せない。

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