MAD探偵 7人の容疑者

MAD探偵 7人の容疑者：香港ノワール・サスペンスの傑作

2007年公開の香港映画『MAD探偵 7人の容疑者』（原題：神探、英題：Mad Detective）は、数々の賞に輝いたクライムサスペンスです。主演は実力派俳優ラウ・チンワン。ヴェネツィア国際映画祭、東京国際映画祭など、世界各地の映画祭で上映され、高い評価を得ました。日本では2011年2月19日に劇場公開、同年8月2日にはDVDが発売されています。

複雑に絡み合う人間ドラマ

物語の中心人物は、他人の内面にある別人格（多重人格）を見ることができる特殊能力を持つ元刑事、チャン・クワイバンです。この能力を駆使し、数々の事件を解決してきたバンですが、その奇行から精神病とみなされ、警察を去ることになります。

5年後、若い刑事ホー・カーアンが、1年半前に失踪したウォン刑事の事件の捜査協力をバンに求めます。ウォン刑事の拳銃が強盗事件で使用され、犠牲者まで出ているというのです。バンの特殊能力によって、ウォン刑事殺害の容疑者として浮上したのは、コウ・チーワイ刑事。バンは、コウが7つもの多重人格を持つことを知ります。

しかし、情緒不安定なバンは、ホーから警察手帳と拳銃を奪い、単独で捜査を開始してしまいます。コウ刑事は、インド人の男がウォン刑事から奪った拳銃を追っていました。バンの正気を疑うホーは、コウと共にインド人の逮捕に向かいますが、インド人が持っていたのは、コウが捜査中に落とした拳銃だったのです。

真相は、コウが自身の罪を隠蔽するために事件をでっち上げたものでした。コウがホーをも殺害しようとしていることに気づいたバンは、彼らを追跡。激しい銃撃戦の末、バンはコウとインド人共々命を落とします。生き残ったホーは、バンの手から自分の拳銃を取り戻しますが、彼自身もまた、不祥事を隠蔽しようとする別人格を抱えていたのです。

豪華キャストと洗練された演出

本作は、ラウ・チンワンをはじめ、ラム・カートン、ケリー・リン、アンディ・オンなど、香港映画界を代表する実力派俳優たちが集結。彼らの演技が、複雑な人間関係と心理描写を深く掘り下げ、物語にリアリティを与えています。

監督はジョニー・トーとワイ・カーファイ。彼らの卓越した演出により、スタイリッシュな映像とスリリングな展開が絶妙に融合。香港ノワール特有の陰影と重厚感が漂う、見応えのある作品に仕上がっています。脚本はアウ・キンイーとワイ・カーファイが担当。緻密に構成されたストーリーは、観客を最後まで飽きさせません。

数々の受賞歴

『MAD探偵 7人の容疑者』は、その高い完成度から数々の賞を受賞しました。香港電影評論学会大奨、香港電影金像奨、アジア・フィルム・アワード、華語電影傳媒大奨など、主要な映画賞で最優秀脚本賞を獲得。脚本の質の高さが評価された証といえるでしょう。

まとめ

『MAD探偵 7人の容疑者』は、予測不能な展開と、人間の深層心理を鮮やかに描き出した、傑作クライムサスペンスです。特殊能力を持つ元刑事と多重人格の刑事の対決、そして、隠された真実。最後まで目が離せない、スリリングな物語が展開します。香港映画ファンはもちろん、サスペンス映画好きにも強くおすすめしたい作品です。

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