MC5

MC5：デトロイト発、パンクロックの先駆者

MC5（エム・シー・ファイヴ）は、1960年代後半から1970年代前半にかけて、アメリカ合衆国ミシガン州デトロイト市を拠点に活動した伝説的なロックバンドです。リンカーン・パークで結成された彼らは、R&Bを基盤としたサウンドに、過激なパフォーマンスと政治的なメッセージを融合させ、後のパンクロックシーンに多大な影響を与えました。

バンドの歴史

1963年、ウェイン・クレイマー（ギター）とフレッド・ソニック・スミス（ギター）を中心に結成。R&Bへの共通の愛情が、彼らを結び付けました。デトロイトでの活動開始後、イギー・ポップ率いるストゥージズと出会い、兄弟バンドとして交流を深めます。MC5とストゥージズは、その過激なパフォーマンスとメッセージで、後にパンクロックの先駆者として認識されるようになります。

MC5は、PAシステムが発達していない時代に、多数のアンプを駆使して爆音を響かせ、観客を圧倒しました。また、フレッド・スミスが宇宙人のような衣装を身にまとい、ウェイン・クレイマーが顔を金色に塗るなど、ステージ衣装も非常に派手で、観客を魅了しました。

マネージャーのジョン・シンクレアは、ホワイトパンサー党の創設者としても知られ、バンドの政治的な姿勢を明確にしました。ヒッピー文化が隆盛を極める時代に、MC5は反体制的なメッセージを強く発信し、異彩を放ちました。1968年のシカゴでのライブでは、警察から中止命令を受けるなど、その活動は常に危険と隣り合わせでした。

音楽性

2枚目のアルバム『Back In The USA』では、チャック・ベリーやリトル・リチャードのカバーを収録するなど、R&Bへのルーツを強く感じさせます。しかし、MC5の真骨頂は、ライブにおける爆発的なエネルギーにありました。アルバム『Kick Out The Jams』の冒頭で聞ける「Kick Out The Jams, Motherfucker!」という叫びは、彼らの反抗精神を象徴するものとして、語り継がれています。

解散と再結成、そして終焉

MC5は1972年に解散しましたが、2002年に再結成を果たします。再結成後は、亡くなったメンバーを除く3人で、DTK/MC5として活動を継続。マッドハニーのマーク・アームや、元ガンズ・アンド・ローゼズのギルビー・クラークらをゲストボーカルに迎え、往年のファンを沸かせました。

2024年4月には、ロックの殿堂「ミュージカル・エクセレンス・アワード」を受賞。しかし、同年5月、ドラムのデニス・トンプソンが逝去。これにより、事実上バンドは活動を終了しました。同年10月には、生前にレコーディングされたアルバム『Heavy Lifting』がリリースされました。

後世への影響

MC5は、活動期間こそ短かったものの、後のハードロック、パンクロックシーンに多大な影響を与えました。ダムド、モーターヘッド、ヘラコプターズなど、数多くのバンドが彼らの音楽をカバーし、リスペクトを表明しています。ザ・ホワイト・ストライプスを率いるジャック・ホワイトも、幼少の頃からMC5の音楽に親しんで育ったことを公言しています。

MC5は、単なるロックバンドではなく、社会に対するメッセージを発信し続けた、時代を象徴する存在でした。その音楽と精神は、今もなお多くの人々に影響を与え続けています。

メンバー

ウェイン・クレイマー（ギター、ボーカル）2024年2月2日没
フレッド・ソニック・スミス（ギター、ボーカル）1994年11月4日没
ロブ・タイナー（ボーカル）1991年9月18日没
マイケル・デイヴィス（ベース）2012年2月17日没
デニス・マシンガン・トンプソン（ドラム）2024年5月8日没
ジョン・シンクレア（マネージャー）2024年4月2日没

ディスコグラフィー

Kick Out The Jams (1969)
Back In The USA (1970)
* High Time (1971)

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