MG・ミジェット

MGミジェット：小型スポーツカーの系譜

MGミジェットは、イギリスの自動車メーカーBMC（British Motor Corporation）が、その傘下のMGブランドから販売した小型2座席オープンスポーツカーです。1961年から1979年という長い期間に渡り生産され、愛好家からは兄弟車種であるオースチン・ヒーリースプライトと合わせて「スプリジェット」と呼ばれ親しまれています。本記事では、ミジェットの歴史、各モデルの特徴、そして特注のレーシングクーペについて詳しく解説します。

開発と誕生

ミジェットの誕生は、MGブランドにおける市場ニーズへの対応からでした。高性能なMGAは存在したものの、大型で高価だったため、より小型で低価格なスポーツカーを求める声が高まっていました。そこで、既に人気を博していたオースチン・ヒーリースプライトをベースに、MGブランドのバッジエンジニアリングによってミジェットが開発されました。

MGミジェットMkⅠ（1961-1964）

1961年6月に発表されたMkⅠは、基本設計をスプライトMkⅡから受け継いだモデルです。グリルデザインやバッジ、内装トリム、計器類などに違いが見られ、価格はスプライトよりも若干高めに設定されました。搭載されたのは948ccのAシリーズエンジンで、ツインSUキャブレターにより46hpを発生。ブレーキは全輪ドラム式でした。オプションとしてハードトップ、ヒーター、ラジオ、ラゲッジラックが用意されていました。1962年にはエンジン排気量が1,098ccに拡大され、出力向上、フロントディスクブレーキ化などの改良が施されました。

MGミジェットMkⅡ（1964-1966）

MkⅡでは、ドアに巻き上げ式窓、外部ハンドル、独立したロックなどが追加され、使い勝手が向上しました。ウインドスクリーンも改良され、リアサスペンションは乗り心地の良い半楕円形リーフスプリングに変更されています。エンジンも強化され、最高出力は59hpに達しました。

MGミジェットMkⅢ（1966-1974）

MkⅢでは、エンジンが1,275ccへと拡大されました。しかし、ミニ・クーパーSに搭載されたものとは異なり、出力が抑えられた仕様となっていました。この変更は、一部のエンスージアストを失望させたものの、クラッチマスターシリンダーの独立化や幌の改良など、使い勝手の向上も図られました。生産期間中には、安全装備の追加やマイナーチェンジが繰り返し行われました。アメリカ市場への対応として、バンパー形状変更や排気ガス規制対応などが施されたことも特筆すべき点です。

MGミジェット1500（1974-1979）

アメリカでの安全規制強化に対応するため、大型のバンパーが装着され、車高も高くなりました。エンジンはAシリーズからトライアンフ・スピットファイアの1,493ccエンジンに変更され、排気ガス規制に対応しました。アメリカ仕様車では、さらに排ガス規制強化に対応するため、触媒コンバーターなどが追加されましたが、出力低下も招きました。

ADO34プロジェクト

ミジェットの後継車開発プロジェクトとして、Miniをベースとした前輪駆動のロードスターの開発が検討されました。しかし、1964年頃にプロジェクトは中止されました。

MGミジェットレーシングクーペ

MGのレーシングドライバーであるディック・ジェイコブスが製作した特注のレーシングカーです。アストンマーチンDB4を思わせるスタイリッシュなボディに、軽量化されたミジェットのメカニズムを搭載。複数のエンジン仕様が用意され、レース活動に活躍しました。

まとめ

MGミジェットは、その長い生産期間と様々なモデルチェンジを通じて、多くの人々に愛された小型スポーツカーです。シンプルな設計と扱いやすさ、そして個性的なスタイリングが、ミジェットの魅力と言えるでしょう。現在でも多くの愛好家がミジェットを維持・レストアし、その魅力を伝え続けています。

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